番外編
□3-18 寝不足にご用心
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(うわっ!)
軽々と抱きかかえられ、ユイは身をこわばらせた。
あのスネイプ教授が、自分を、横抱きにしている――。
意識するにつれ、顔に熱が集中するのがわかる。
スネイプの声が近い。
「セブルス、動かさないほうが――」
「聞こえなかったか?この子は我輩が引き取る」
「医務室に行かないんだったらわざわざ場所を移動する必要はないだろう。私が責任を持って看病するよ」
「我輩としては、一教師にすぎない人の皮を被った獣よりも、モチヅキの寮監である我輩のほうが適任だと思うのだが?」
「寮監なのに、ユイが体調不良だってことに気づかなかったのかい?」
「貴様はいつもそうやって――」
『あ、あのっ』
ヒートアップする喧嘩にいたたまれなくなり、ユイが声をあげると、2人ともぴたりと話すのをやめた。
「ユイ、大丈夫?」
「……起きているなら自分で歩きたまえ」
心配そうに近づいてくるリーマスからユイを離すように、スネイプはリーマスに背を向けた状態でユイを立たせる。
顔を赤くして毛布にくるまるユイを見て、熱が上がったんじゃないかとリーマスは心配した。
「やっぱりもう少し休んでいったほうがいいんじゃないかい?」
「我輩が引き取る、と先ほど言ったはずだ」
スネイプはユイから毛布を奪い、ソファに投げ捨てるようにすると、ユイの手を引いて有無を言わせぬスピードでルーピンの部屋から出た。
*
「嫉妬って怖いね……」
誰にともなく呟いたリーマスは、テーブルの上のおかゆが消えていることに苦笑いした。
自分が食べさせるはずだったおかゆは今頃スネイプの手の中にあるに違いない。
「まったく、素直じゃないんだから」
スネイプのことだから、苦い薬を準備していて、「食後に飲まないと効かない」とか適当なことを口実にユイにおかゆを食べさせる気なのだろう。
毛布を片付けながら、どうしてユイのような子がスネイプに懐くのか理解できないな、とため息をつきながら肩をすくめた。
Fin.
→あとがき