番外編
□3-18 寝不足にご用心
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しばらくして目を覚ますと、リーマスは「夕食をとってくる」とユイに告げた。
もうそんな時間かと身を起こそうとするユイを目で制し、まだ寝ているように言う。
「何か食べたいものはある?」
『チキン……』
「え?チキン?」
食事を届けることができなかったシリウスのことが頭をよぎったユイが考えなしに呟くと、リーマスは「シリウスみたいだ」と苦笑いをした。
「ああ、シリウスっていうのは私の昔の友人で、いつもチキンばかり食べている男でね――っと、話をしている場合じゃなかった。チキンはさすがに胃に悪いだろうから、何か食べやすそうなものをもらってくるよ」
『すみません。お願いします』
「いいかい?絶対に、抜け出そうなんて考えないことだ。もし私が帰ってきて君がいなかったら――次に見つけたときに気絶させてでも医務室にひっぱっていく。わかったね?」
『……はい』
脅しにも聞こえるセリフにユイが頷くのを確認し、リーマスは「いい子だ」と言って部屋を出て行った。
***
リーマスの帰りを待つ間に、再び寝てしまっていたらしい。
目を覚ますと、熱を確認していたらしいリーマスがユイから手を離し、ドアへ歩いていくところだった。
背中を向けているリーマスは、ユイが起きたことに気づいていない。
テーブルの上に置かれているおかゆらしき皿から湯気が出ていないところを見ると、結構な時間寝てしまっていたのかもしれない。
(いいかげん起きなきゃ)
そう思ったユイが、次の瞬間、身を起こすのをやめて寝たふりをしようと決め込んだのは、ドアの向こうからおなじみのバリトンボイスが聞こえてきたからだ。
「夕食の席に見当たらないと思っていたが……こんな所にいたのか」
「具合が悪そうだったから寝かせておいたんだ」
「ここである必要はあるまい」
「医務室に行くのは嫌がってね。それにしてもセブルス、よくあの大人数の中でユイがいないことに気づいたね。席が決まっているわけでもなければ、全員が同時に食べ始めるわけでもないのに」
「フン、やかましいからな。いればすぐに分かるだけのことだ」
「ふうん……それで、何をしに来たんだい?」
「連れ戻しに来たに決まっている」
スネイプはリーマスの制止を無視して部屋の中に入ってくると、ユイを毛布ごと抱き上げた。