番外編

□3-18 寝不足にご用心
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「少し、熱いね」

『はい――っえ?』

「どこか痛い所は?」

『いえ。……あの、ルーピン先生?』



説教か罰則を覚悟していたユイは、顎に手を当て「うーん」とうなるリーマスに拍子抜けする。



「気づいていないのかい?顔色がすごく悪いよ。授業中もずっと上の空だったし……」

『す、すみません……大丈夫です』

「大丈夫じゃないだろう?先週見たときよりもやつれているみたいだし……ちゃんと食べてるかい?どこか具合が悪いなら、マダム・ポンフリーに見てもらったほうが――」

『それはダメ!』



医務室に行ったら、また無茶をして、と延々とマダムの小言を聞くはめになる。

下手をすれば元気爆発薬を飲まされ、夜更かし禁止令が出されかねない。

ただでさえ時間が無いというのに、これ以上勉強の邪魔をされるわけにはいかなかった。



『耳から煙を出しながらじゃ勉強に集中できないんですよっ』

「でも、今のままでも集中できないだろう?」

『だ、大丈夫です!ただの寝不足とか貧血とかそんなんですから!ちょっと休めば元気になります!』

「大人しく休む気があるなら、最初からそんな状態にはならないと思うけど?」



的を射たリーマスの一言に、ユイは何も言い返せなくなる。

『でも……』『医務室は……』とぶつぶつ声を小さくするユイを見て、リーマスは「仕方が無いな」と言って立ち上がった。



「医務室に連れて行くのはやめるよ。その代わり、ここでおとなしく寝ているんだ」

『え?』

「また倒れられたら困るからね」



リーマスはテキパキとソファの上に積みあがっていた資料を片付け、ユイが寝るスペースを作り、奥から毛布を持ってきた。

有無を言わせぬ圧力に戸惑いつつも、ユイはリーマスの好意に甘え、ソファに横になった。


受け取った毛布からわずかに甘い香りがし、ユイは微笑んだ。

毛布をかぶってチョコレートを食べているリーマスの姿を想像してしまい、頬が緩んだ顔を見られないように毛布を引き上げる。

心地よい温もりと甘い匂いに、うとうとし始めるユイを、リーマスはほほえましそうに眺めた。
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