アズカバンの囚人

□27.一夜明けて
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(ハリー……すごいわ)


ロンの口ぶりからすると、ハリーは逆転時計を使って過去に戻るまでもなく、たった1度でディメンターを退けることに成功させたのだ。

ハリーの成長ぶりに感心していると、ロンが「君の薬のおかげだよ」といい始めた。



『薬?』

「そう。ええと、なんだっけかな……フェニックス?フェンリル?」

『フェリックス・フェリシス?』

「そう!それそれ。君がハリーに渡した薬の中にそれがあるのをスネイプが見つけて、ハリーに飲むよう言ったんだ。そしたらハリーってば気持ち悪いくらい元気になっちゃってさ。まるでディメンターが古い友達かなんかで、自分の誕生日を祝うために一斉に集まってくれたみたいな反応だったよ……で、集まってきた友人達をいっきにドーン、だよ」



にわかには信じられない話だった。

ハリーにフェリックス・フェリシスを渡した記憶はない。

ごちゃっとまとめて投げた薬の中に“幸運の液体”が混ざっていたのはほとんど奇跡に近い。



『シリウスはどうなったの?ルーピン先生は?』

「僕達みんなボロボロだったから、城に戻ってまっすぐにここに来たんだ。もちろんシリウス・ブラックも一緒にね」

「心臓が止まるかと思いましたよ!」



マダム・ポンフリーが会話に割り込んだ。

昨晩の出来事を思い出したのか、怒りを露にしている。



「傷だらけの生徒が3人に、お尋ね者のシリウス・ブラック……あの場にスネイプ先生がいらっしゃらなかったら、私はブラックが生徒達を人質にしてホグワーツに乗り込んできたのかと思わざるを得なかったでしょう!」

『どうしてみんな連れて行かれたんですか?あと、ルーピン先生は?』

「僕達を置いてすぐ、スネイプが出て行ったんだ。僕はてっきり君を捜しに行ったもんだと思ったのに……あいつは、朝方になってダンブルドアとファッジを連れて戻ってきた」



ロンは怒りの表情になった。

ファッジ達が入ってくるなり病室は騒がしくなり、治療どころじゃなくなったとマダムも怒った。



「状況を確認したいからブラックを引き渡せって言って、無理やり連れて行こうとしたんだ。僕らみんなで無実なんだって主張したら今度は共犯扱いさ!見かねたダンブルドアがゆっくりと順番に話を聞こうと提案してくれなきゃ、今頃僕達揃ってアズカバンだったよ」



ロンの話は誇張されているに違いないが、それでも大体の流れはわかった。

今頃きっと、どこかで一人ひとり昨夜の出来事を語っているに違いない。
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