アズカバンの囚人
□23.動物もどき
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スキャバーズは岩の隙間を抜け、丘を駆け上がり、校庭の隅へ隅へと逃げた。
(早くしないと――)
目の前にはもう暴れ柳が見えていた。
後ろからハリーとハーマイオニーが2人を追ってくる声が聞こえる。
逃げるスキャバーズに向かってユイは手を伸ばすが、スライディングするようにスキャバーズに飛び掛ったロンに先を越されてしまう。
「捕まえた!スキャバーズ、なんで僕を噛んだりしたんだ!」
『ロン、今すぐそのネズミを貸して!』
「どうしたのさユイ怖い顔して。スキャバーズにはもうきつく言ったから大丈夫だよ」
ロンは急に不安そうな顔をしてネズミを握り締め胸元に抱いた。
もう説明している暇はない。
無理やりロンからスキャバーズを奪おうとしたとき、「ロン、ユイ、逃げろ!」というハリーの切羽詰った声が聞こえた。
「ハリー、ハーマイオニー、逃げろ!」
ロンが恐怖に顔をゆがませ、ハリーとハーマイオニーの後ろを指さす。
暴れ柳を見て2.3歩後ずさりするハリーとロンの後ろに、巨大な黒い影が迫っていた。
「グリムだ!」
『違うわ!待って!』
ロンの声を合図とするように、シリウスが、こちらへ向かって走ってきた。
うなり声をあげ、大きくジャンプしハリーとハーマイオニーを飛び越える。
ユイには目もくれず一直線にロンめがけて駆けてきて、そのままロンの足をくわえて暴れ柳の根元へ引きずっていった。
「わあああああぁっ」
『ダメよ!』
ユイはシリウスを止めようと大きな体につかみかかったが、シリウスの勢いは止まらない。
「ハリー助けてぇぇ」
『待ってパッドフット!落ち着いて!っわ』
木の根元に来たところで、ユイは根っこにつまずき振り落とされた。
『ダメだってば!』
ロンが穴の中へ引きずり込まれていく。
ユイはロンに向かって手を伸ばすハリーを木の根元から遠ざけるように突き飛ばし、『ダンブルドアに知らせて!』と叫んで穴の中へ飛び込んだ。
『たたた……』
勢いよく頭から飛び込んだため、あちこちすりむいてしまった。
薄暗い洞窟内を見渡すと、シリウスがロンをくわえたままズルズルと奥の方へ引きずっていく姿が見えた。
『シリウス、ロンを放して!』
「え?シリウスって……うわぁぁぁぁあああっ!!!」
階段までたどり着いたシリウスが人の姿に戻る。
目の前に現れた指名手配犯に、ロンが声の限りで叫んだ。
「ロン!」
穴の外からハリーとハーマイオニーの叫び声と、暴れ柳のきしむ音が聞こえる。
ダンブルドアに知らせるよう言ったのに、2人はまだ木の前にいるらしい。
『ロンのことは私に任せて!大丈夫だから、校長先生を呼んできて!』
ユイは穴の入り口に向かって叫び、さらに奥へとロンを引きずっていくシリウスを追った。
***