アズカバンの囚人
□23.動物もどき
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ハリー、ロン、ハーマイオニーの3人は丘の上にいた。
もう小屋から出てきたところらしく、ロンの手にはスキャバーズが抱えられている。
(ああーっ、どうしよう!)
シリウスは……と周囲に目を向けるが、暴れ柳の下にはシリウスの姿はなかった。
(落ち着くのよ私!怪しまれないようにスキャバーズをロンから奪わなきゃ……)
『ロン!ハリー!ハーマイオニー!』
ユイは上空から声をかけた。
3人は、声の主を捜してキョロキョロと辺りを見回している。
箒で飛んでいるユイを見つけた3人の元に降り立つと、ハーマイオニーがユイに抱きついた。
「ユイ!もう大丈夫なの?倒れたって聞いて、私心配で心配で」
『ええ、大丈夫よ。うわさっていつも大げさになって広まるもんでしょ』
「ほらね。僕の言った通りだろ。君は心配しすぎなんだよ――あ、これは別に僕が心配してなかったってわけじゃないよ」
あわてて弁解するロンの手の中のスキャバーズは、やせこけており、毛がばっさり抜けてあちこちが大きく禿げている。
緊張のあまり声が裏返りそうになりながら、ドキドキする胸を押さえて、ユイは笑顔を作った。
『試験終了祝いは終わっちゃった?』
「うん。ちょうど今出てきたところだよ」
「もうそろそろ日没だから、帰れって言われちゃって……」
「ビッキーにあなたも会わせたかったわ」
『また明日だって行けるわ。あれ?ロン、ペットのネズミ見つかったの?』
スキャバーズがキーキー鳴きながらロンの手から逃れようともがいている。
こいつがリリーとジェームズが殺される原因を作った裏切り者だと思うと、体の内側から怒りと悲しみが競りあがってくる。
それでも笑顔は絶やさないよう精一杯努力した。
「ハグリッドの小屋にいたんだ。でもこいつ、じっとしてなくて!」
『あら、怪我しているじゃない』
ユイは、ボロボロのスキャバーズを心配するように――そう見えるように最大限の努力をして、のぞき込んだ。
『何かのストレスかしら?だいぶ錯乱してるみたいだけど……なんか変なきのこでも食べたんじゃない?』
「そうとしか考えられないよ。まったく、こいつ、いったいどうしたんだろう?」
『ロン貸して。ちょっと見てみるわ』
ユイはカラカラに乾く喉に唾液を押し込み、スキャバーズに向かって手を伸ばした。
大暴れしながら狂ったように鳴くスキャバーズは、じたばたと身をよじり、ついにロンの手にがぶりと噛み付いた。
「アイタッ!スキャバーズのやつ、僕の指を噛みやがった!」
『なっ!』
ネズミはユイの手に渡る前に、ロンの指の間をすり抜け、地面にボトッと落ちて、一目散に逃げ出した。
「待てったら!スキャバーズ、戻れ!」
『ロン!私が追いかけるわ!』
ネズミの後を追って猛スピードで走っていくロンの後を、ユイも全速力で駆けた。