アズカバンの囚人

□23.動物もどき
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『ちょっとドラコなにやってるのよ』

「手元が狂っただけだ」



並々と注がれた水がこぼれるのもかまわずに、ドラコはユイに背を向けたままグラスをユイに渡した。



「後で直接言われると思うが、出られなかった分の試験はレポート提出になるらしいぞ」

『……なんですって?』

「防衛術のテスト中に気絶したから、占い学の試験に出られなかっただろ?だからスネイプ先生が――」

『試験終わったの!?』

「あ、ああ……数時間前にな」



――ガシャン


グラスが割れる音に驚いて振り返ったドラコの肩を、ユイが激しく揺さぶる。



『今何時!?』

「お、おい。どうした」

『いいから何時よっ!』



ドラコの首を絞める勢いで聞いていたユイは、時計の鐘が8時を告げるのを聞いて布団を蹴り上げた。


(まずいわ!シリウスっ!)


もはやユイの頭の中にはボガートのことはひとかけらも残っていなかった。



「ひとまず落ち着け」

『落ち着いてらんないわ!離して!』

「何を騒いでいるんです!」



騒ぎを聞きつけたマダムが戻ってきて、ベッドから出ようといているユイの腕を掴み脈を確認し始めた。


(脈測っても意味ないですって!)


今、ユイの血液はものすごい勢いで体中をめぐっているはずだ。



「外傷もないし、問題なさそうね」



元気なら早く出て行ってくれとでも言わんばかりに、マダム・ポンフリーは「ハリー達のところへ行ったら?」とユイに告げた。

ドラコの静止を振り切って医務室から走り去ろうとしていたユイは、嫌な予感がしてピタッと足を止めた。



『ハリー達……?』

「なんとか祝いをするから、あなたが起きたら渡して欲しいと言ってこれを置いていったのよ」



マダム・ポンフリーはユイにハリー達からの伝言が書かれた紙を渡した。

そこには、“試験が終わったらハグリッドの小屋でバックビークの勝訴祝いと試験終了祝いをやるから、元気になったら来て欲しい”という内容が書かれていた。



「何をするって?まさか行く気じゃないだろうな?」

『な……によ、これ……冗談じゃないわ!!』



横からドラコが覗き込むと同時にユイは震える手で紙を握りつぶした。

ベッド脇のカバンをひっつかみ、中から箒と杖を取り出し、窓ガラスを打ち割って外へ文字通り飛び出す。


(バカバカバカ!なんでハグリッドの小屋に行くのよ!)


ドラコとマダム・ポンフリーが何か叫んでいたが、何を言っているのかまでは聞き取れず、『後で必ず直します』とだけ大声で返し、ユイは一直線にハグリッドの小屋を目指した。



***
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