アズカバンの囚人

□20.スネイプの恨み(後編)
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踊り場まで来たところで、リーマスがふいに足を止めた。



「次からは私のところにおいで――もちろん昼にね。話を聞くくらいしかできないかもしれないけど、1人で夜中に塔に登るよりはよっぽどいいはずだ」



部屋でも教室でも貸すからというリーマスの言葉で、ユイは今自分がひどい顔をしているのだろうなと思った。

少し前まで泣いていたし、リーマスが嘘をついていなければ隈もできている。

寒さで動きが鈍くなった表情筋が、まともな顔を作り出せているとは思えない。


(うわぁ、急に恥ずかしくなってきた)



『あの、私そんなにつらそうに見えます?』

「少なくとも、僕にはそう見えるよ。気丈にふるまう姿が痛々しいほどにね。まるで何かに追われているような、重圧に耐えかねているような――」

『ルーピン先生?どうかしたんですか?』

「何か聞こえなかった?」

『いえ……私、つらくないですよ。自分にできることが見つかって嬉しいくら「しっ、黙って」



リーマスは、ユイの言葉を制して杖の明かりを消した。


(え?何なに!?)


ユイには何が起こっているのかさっぱりわからなかった。

どこからが壁で、どこからが階段なのかわからないくらい真っ暗だ。

それなのに、リーマスはユイの手を引き、足音を立てないようにゆっくりと階段の踊り場から廊下に出た。


(ちょ、どこ行くの!?なんも見えないんだけど!)


まるでリーマスには周りが見えているかのようなしっかりとした足取りだ。

人狼は夜目が利くんだろうか……などと考えながらユイが手を引かれるままついていくと、廊下の先に青白い光が見えた。


(あれってもしかして……)


「……ール、パ…フッ……ロングズから――」



わずかに聞こえてきた声の正体がわかり、ユイは背中に嫌な汗が流れるのを感じた。



「……プ教授にご挨拶申し上げる。そして……」

「続けたまえ」


(うわーーー!まずいまずいっ、教授がいるよっ!!)


リーマスも声の主がハリーとスネイプだと気づいたらしく、緊張を解いた。

そして、逃げようとするユイの手をがっちりとつかんだまま、半ば引きずるように光に向かって歩いた。



「セブルス」



リーマスが声をかけると、青白い光の中に、怒れるセブルス・スネイプの顔が浮かび上がったた。


(教授とは四六時中会ってたいけど、今はいろんな意味で会いたくなかった!)




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