アズカバンの囚人
□20.スネイプの恨み(後編)
2ページ/5ページ
踊り場まで来たところで、リーマスがふいに足を止めた。
「次からは私のところにおいで――もちろん昼にね。話を聞くくらいしかできないかもしれないけど、1人で夜中に塔に登るよりはよっぽどいいはずだ」
部屋でも教室でも貸すからというリーマスの言葉で、ユイは今自分がひどい顔をしているのだろうなと思った。
少し前まで泣いていたし、リーマスが嘘をついていなければ隈もできている。
寒さで動きが鈍くなった表情筋が、まともな顔を作り出せているとは思えない。
(うわぁ、急に恥ずかしくなってきた)
『あの、私そんなにつらそうに見えます?』
「少なくとも、僕にはそう見えるよ。気丈にふるまう姿が痛々しいほどにね。まるで何かに追われているような、重圧に耐えかねているような――」
『ルーピン先生?どうかしたんですか?』
「何か聞こえなかった?」
『いえ……私、つらくないですよ。自分にできることが見つかって嬉しいくら「しっ、黙って」
リーマスは、ユイの言葉を制して杖の明かりを消した。
(え?何なに!?)
ユイには何が起こっているのかさっぱりわからなかった。
どこからが壁で、どこからが階段なのかわからないくらい真っ暗だ。
それなのに、リーマスはユイの手を引き、足音を立てないようにゆっくりと階段の踊り場から廊下に出た。
(ちょ、どこ行くの!?なんも見えないんだけど!)
まるでリーマスには周りが見えているかのようなしっかりとした足取りだ。
人狼は夜目が利くんだろうか……などと考えながらユイが手を引かれるままついていくと、廊下の先に青白い光が見えた。
(あれってもしかして……)
「……ール、パ…フッ……ロングズから――」
わずかに聞こえてきた声の正体がわかり、ユイは背中に嫌な汗が流れるのを感じた。
「……プ教授にご挨拶申し上げる。そして……」
「続けたまえ」
(うわーーー!まずいまずいっ、教授がいるよっ!!)
リーマスも声の主がハリーとスネイプだと気づいたらしく、緊張を解いた。
そして、逃げようとするユイの手をがっちりとつかんだまま、半ば引きずるように光に向かって歩いた。
「セブルス」
リーマスが声をかけると、青白い光の中に、怒れるセブルス・スネイプの顔が浮かび上がったた。
(教授とは四六時中会ってたいけど、今はいろんな意味で会いたくなかった!)
*