アズカバンの囚人
□17.守護霊
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1週間が経ち、新学期が始まると、たちまちホグワーツに活気が戻った。
寮生たちは談話室で各自のクリスマスパーティとクリスマスプレゼントについての話で盛り上がっている。
会話には混ざらずに1人で本を読んでいたユイの隣にドラコが座った。
「あの手紙の内容は本当か?」
声も眉もひそめて話すドラコに、ユイは無言でうなづく。
ルシウスだけに手紙を送ったら怪しまれるだろうと判断し、ユイはルシウスに送った手紙とは別に、ドラコにもナルシッサにもそれぞれ違った内容で手紙を送っていた。
ドラコへの手紙には、ファイアボルトの件を書いた。
「……どうせ偽物だろ?」
『本物みたいよ。今は呪いがかかっていないかどうかを調べるために没収されちゃっているけど』
「当然だ。誰がポッターなんかのために善意でファイアボルトを送る?」
ドラコは、ハリーに本物のファイアボルトが送られてくるはずがないと何度も繰り返した。
魔法生物飼育学で火トカゲにえさをやっている途中も、占い学で手相を見ている間も言い続け、もし箒が本物で普通の状態であることが証明されれば、自分が呪いをかけるとまで言い始める始末だった。
箒にこだわらずに技術を磨くべきだとユイが何度言ってもドラコは聞かない。
このままの状態のドラコにバックビークのことを言っても良い方向には進まないだろうと判断し、ユイは一度ドラコを説得するのを諦めた。
(ひとまず現状報告ね)
ハグリッドを訪ねるついでにシリウスの所にも行こうとユイはチキンをカバンに詰め込んだ。
*
「どこへ行くつもりだMs.モチヅキ」
大広間から玄関ホールへ向かう途中で呼び止められた。
廊下を這ってくるバリトンボイスにユイの背筋に冷たい汗が走る。
「最近君は我輩に何かを隠しているな?以前は暇さえあれば我輩のところにきて、うるさいほど質問をしていったというのに、最近は目の届かない所でこそこそと――図書館でも地下牢でもなく、どこに行っているというのだね」
『ちょっと友達と一緒に勉強を……』
「さぞかしそのご友人は有智高才なのでしょうな。ぜひ誰なのかをお伺いしたいものだ」
『いえ、スネイプ先生に比べたら全然です!』
ハーマイオニーの名前を出せば、授業中の彼女への風当たりが強くなると考え、ユイはごまかしたのだが、逆効果だった。
スネイプはこめかみをピクリと震わせ、さらに声を低めた。
「質問を2つ無視したな。“どこで?”“誰と?”と我輩は申し上げたのですぞ」
シリウスとの魔法の練習に加え、ハーマイオニーと一緒にハグリッドの小屋にいることが多かった冬休み。
思えば、学期中よりも薬を煎じることに費やす時間は減ってしまっていた。
(私としたことが!)
スネイプを後回しにするなんて。
これは土下座をするべきだろうかと考えていると、静かな声が2人の間に入り込んだ。