アズカバンの囚人

□16.炎の雷
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クリスマス休暇が始まり、ホグワーツからいっきに人が消えた。

ユイの勘違いでなければ、秘密の部屋事件のときよりも残っている人が少ない。

それほどまでにディメンターの影響が大きいのだろう。


(確かにディメンターと一緒じゃクリスマスも楽しめないわよね)


誰もいない談話室を抜け、ユイは森を目指した。



『パッドフットー』



静かな森の中にユイの声が広がる。

耳を澄ませてみるも返事はない。



『おーい、シリパットやーい。御飯だから出ておいでー』



ユイは箒に乗って旋回しながら捜してみたが、時が止まってしまったような森は、犬どころか鳥の鳴き声すらしない。

遠くからドサッと木の枝から雪が落ちる音が聞こえる。

もしかしたらと音が聞こえた場所へ降りてみるも、人の気配はなかった。

雪に覆われた地面に足跡1つすらない。



『シリウス・ブラック出ておいでー、出ないと目玉をほじくるぞー』

「ずいぶんと物騒な物言いですな」

『うひゃぁ!』



誰もいないことをいいことに歌って遊んでいると、突然上空から声が降ってきた。



『すすすスネイプ教授!い、いつからそこに!』

「目玉をなんとかというあたりからだ」


(危なっ!)


もう少し早くスネイプが到着していたら、今頃ユイは尋問されていただろう。

ユイは調子に乗って替え歌にのせてシリウスの名前を口に出したことを反省し、もう2度と呼ぶまいと心の中で誓った。



『教授が箒で飛ぶなんて珍しいですね。どうしたんですか?』

「ここで何をしていた?」



スネイプはユイの質問には答えず、箒から降りてザクザクと音を立てながら大股で近づいてきた。



「黙っているところを見ると、何か良からぬことを企んでいたのであろう」

『いえ、いいえっ。ちょっと気分転換をと思っただけです!』

「わざわざ森に来なくてはいけないような気分転換が必要なほど根を詰めて何をやっていたのか教えて頂きたいものですな。もっとも、ここに来た目的が他の事なのであれば話は別だが――おい」

『え?うわっ』



スネイプと距離をとるように後ずさりしていたユイは、木の根っこに躓き背中からひっくり返った。



『――っぶ!』



しりもちをついた拍子に木に振動が伝わり、上から盛大に雪が落ちてくる。

ユイは、頭から雪に埋もれ、雪だるま状態になった。
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