アズカバンの囚人
□13.すれ違う心
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週末に向けて、天候は着実に悪くなっていった。
1日中強い雨風が続き、何をしていても遠い雷鳴が聞こえてくる。
天候の悪化に伴い、ホグワーツ内の空気も悪くなっていった。
対戦相手の変更を告げられたハリーはピリピリしていたし、理由は分からないがスネイプも日増しに機嫌が悪くなっている。
ユイは毎日脱狼薬を持って行ったが、リーマスの体調は悪くなる一方で見ているほうがつらくなる。
薬を届けるついでに塔へ食事を運んでも、グリフィンドールの練習を見に行って以来、ユイがしつこく“シリパット”と呼んだためシリウスはしょげていた。
***
金曜日、風は唸りをあげ、雨は一層激しく降った。
廊下も教室も真っ暗で、松明や蝋燭の数を増やしたほどだった。
ただでさえ暗いというのに、闇の魔術に対する防衛術の教室に入ってくるなり、スネイプは杖を振り教室のすべての窓を閉め始めた。
バタン、バタン……という音を聞きながら、ユイは言いようのない不安に駆られる。
窓はすべて閉められたのにゴロゴロという上空の不穏な音が大きく聞こえる。
そして嫌な予感は的中した。
ローブが後ろになびくほどのスピードで教室の真ん中を歩き、教卓にたどり着いたスネイプは、スクリーンを下ろすと雷にも負けないほどの低く不気味な声で「教科書の394ページを開け」と言った。
(えっ――……)
クラス中の誰もがそうであったように、ユイも驚き、目を見開いた。
――ただ、理由だけは違った。
――どうして防衛術の授業にスネイプがいるんだ?
――ルーピン先生はどうした?
――なんでそんな先のページを?
ざわざわと戸惑いの声を上げる生徒達の中で、ユイは声を失いスネイプを見た。
(それって人狼のページじゃ……?)
視線に気づいているはずなのに、スネイプはユイを見ようとしない。
「スネイプ先生、ルーピン先生はどうなさったんです?」
「君が気にすることかね?諸君のルーピン先生は授業をできるような状態ではないとだけ言っておこう」
ハリーの問いにスネイプが事務的に答える。
靴音を響かせ、ゆっくりと机の間を移動し、映写機のある最後列まで移動した。
「教科書を開きたまえ394ページだ」
ユイが恐る恐る指定されたページまで教科書をめくると、そこには確かに“狼人間”というタイトルが記されていた。
*