アズカバンの囚人

□09.脱狼薬
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(ピーブズに秘密の抜け道教えておいてもらって助かったわ)


今回の計画は、途中で誰かに見つかったら終わりだ。

入学前にピーブズに教えてもらった隠し扉や秘密の通路、それからたまに外を通りながらユイは北の塔をめざす。


(私もアニメーガスになれればなぁ)


本当はアニメーガスになって行動する予定だった。

が、寝る間も惜しんで練習したにも関わらず、しっぽを生やしたり猫耳をつけたり目を変えたりすることくらいまでしか成功していない。

そんなコスプレもどきではディメンターどころかフィルチの目すら欺けないだろう。


シリウスたちが数年がかりでできるようになったことを簡単にできるはずがないのだ。

世の中そう思い通りに行かないことを思い知らされた。



『アロホモラ』



ユイは辺りに人がいないことを確認し、急いで塔の中へ入った。

前回ボガートの一件で作戦が失敗しているため、今回は1ヶ月前からコツコツと準備を進めていた



『変声薬でしょ、変色剤でしょ、フレジョからもらった薬と、透明薬に、縮み薬と元に戻る薬……食料はここに置いていった方がいいわね』



1つ1つカバンから取り出し中身を確認し、大広間から持ってきたパンやクラッカーを机の上に乗せる。

薬だけ1つの袋にまとめて詰め込み再びカバンの中にしまった。


(よし、これだけあればしばらくは住めるわね)


指差し確認を終えると、ユイは再び来た道を戻った。



***



太った婦人にこっそりプロテゴをかけたら、シリウスを探しにいこうかと考えていたユイは、グリフィンドール塔の前でハリーにばったり出くわした。



「あれ、ユイ?こんなところで何してるの?」

『は、ハリーがホグズミード行かないってドラコに聞いて、それで、私も居残り組みだから……』



苦し紛れに『一緒に宿題でもしようかと思って』とごまかすと、ハリーは喜んだ。



「宿題もいいけど、ヘドウィグに会いに行かない?」

『いいわね』

「3年生でホグズミードにいけないのは僕ひとりだと思ってたよ」

『ハリーはサインしてもらえなかったの?』

「うん……僕らって同じ境遇になることが多いね」








「ハリー?――と、ユイ?」



廊下をいくつか歩いていると、すぐにリーマスから声がかかった。

グリフィンドールとスリザリンの組み合わせに驚くリーマスに、ホグズミードにみんなが行っていることを告げると、リーマスは2人をじっと観察して部屋の中へ招き入れた。
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