アズカバンの囚人
□07.縮み薬
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縮み薬の作り方を説明しながらスネイプは空席に目を移す。
(来ると思っていたのだがな……)
どんなにおとなしくしていろと言われようが、なにかと理由をつけて――ダメなら忍び込んででも――魔法薬学の授業には出席をすると思っていた。
ドラコを置いて1人で来たら何と言って追い返してやろうかとまで考えていただけに、ユイの姿がないことが無性に腹が立つ。
さあいよいよこれから調合といったところで、バタバタと走ってくる2人分の足音が聞こえた。
(来たか)
足音の主が現れるのを心待ちにしていたのはスネイプだけではない。
半ばドラコを引きずる形で息を切らして入ってきたユイを見て、生徒達は安堵の息を漏らした。
『申し訳ありません!遅れました!!ドラコのせいで!』
「人の、せいに、するな……っ」
『はぁ、疲れた……でも間に合ってよかったです。授業出れなかったらドラコのこと呪い殺すところでした』
「授業が半分も終わってから来るのは間に合ったとは――」
『調合が始まっていないからギリギリセーフです!』
重く張り詰めた空気がユイの明るい声によって壊されていく。
ユイの登場にスネイプが眉間に込める力を緩めたのを感じ取り、教室中の生徒が心の中で拍手を送った。
『ちゃんとすぐに始められるよう、マダム・ポンフリーを待っている間にドラコに作り方を叩き込みましたから大丈夫です!今日は縮み薬ですよね?』
「さよう……」
『あ、でも教授のお話を聞き逃してしまったのは痛いですね……調合より教授の話を聞く時間のほうが貴重ですし……』
話し続けるユイに圧倒されつつ、誰もが心の中で「今日は嫌味しか言ってないから貴重な話なんてこれっぽっちもなかったよ!」と叫んだ。