アズカバンの囚人
□07.縮み薬
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ユイとドラコが医務室でマダム・ポンフリーを説得している頃、地下牢教室にはかつてないほどの冷たく張り詰めた空気が流れていた。
乱暴に扉を開けて入ってきたスネイプは、意地の悪い目でぐるりと教室内を見渡し、夏休みの課題のできの悪さを延々と語った。
「去年1年間、諸君の頭の中にはいったい何が詰め込まれたのだというのだね……ロングボトム」
「ひっ」
「君、教えて頂きたいものだが、君の分厚い頭蓋骨を突き抜けて入っていくものがあるのかね?」
名指しされたネビルは真っ青になった。
「君は今までに使用した魔法薬の材料の名前を1つでも正しく言えるのかね?」
「あ……う……」
「“沸騰”とはなんだか分かるか?右回りと左回りの違いは?」
いくらなんでも馬鹿にしすぎだろうとハリーとロンは眉を寄せて目配せしたが、ネビルは恐怖のあまり何も言えずに震えていた。
隣でハーマイオニーが材料も製造法もすべて言えるとでも言わんばかりの自信に満ちた顔で手を挙げたが、当然のように無視される。
教卓に置かれた羊皮紙の束をパラパラとめくりながら、スネイプは容赦なく次々と生徒たちに嫌味を言い、答えられないと減点を言い渡した。
いつもと違うのは、ハリーやロンなどのグリフィンドール生だけではなく、スリザリン生もスネイプの嫌味のターゲットとなっていることだった。
嫌味を言われ慣れていないスリザリン生は戸惑い、助けを求めるように空席に目を向けた。
「ねえハリー、今日スネイプが機嫌が悪いのって、マルフォイとユイが原因なんじゃない?」
「ユイがいないからスネイプを止めるやつがいないんだよ」
こそこそとハリーとロンが話していると、目ざとく見つけたスネイプが、いつもの憎しみの込められた鋭い目で睨みながら、ツカツカと2人の元へ歩いた。
「ポッター、君にはここが談話室か何かに見えるのかね?」
「いえ……先生、あの、そろそろ授業を受けたいなと思いまして……」
「そこまで言うからには、今日の授業の予習は完璧なんでしょうな?ポッター、縮み薬の材料はなんだ?」
「……」
ハリーが下を向く姿を見て、スネイプは意地の悪い笑みを浮かべた。
「我輩は確か、授業に来る前には教科書を開けと、そう最初に忠告したはずではありませんでしたかな?」
「雛菊の根、萎び無花果、死んだ芋虫、ネズミの脾臓、ヒルの汁です。先生」
我慢できずに発言したハーマイオニーをスネイプは睨み、「君はいつからポッターになったんだ」とグリフィンドールから5点減点した。
スネイプはそれからさらに10分ほどハリーいびりを続け、ようやく授業を開始した。