アズカバンの囚人
□07.縮み薬
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「おい、ハリー」
名前を呼ばれて我に返ると、シェーマス・フィネガンがハリーの真鍮の台秤を借りようと身を乗り出していた。
「聞いたか?今朝の“日刊預言者新聞”――シリウス・ブラックが目撃されたって書いてあったよ」
「どこで?」
ハリーとロンが急き込んで聞いた。
テーブルの向こうでは、ドラコが目を上げて耳をそば立てた。
「ここからあまり遠くない」
シェーマスは興奮ぎみだ。
「マグルの女性が目撃したんだ。もち、その人はほんとのことはわかっていない。マグルはブラックが普通の犯罪者だと思っているだろ?だからその人、捜査ホットラインに電話したんだ。魔法省が現場に着いたときにはもぬけの殻さ」
「ここからあまり遠くない、か……」
『遠くないってどのくらい?』
「ダフタウンだから……ん?ユイ、君もシリウス・ブラックに興味があるの?」
『まあそれなりに……ホグワーツにディメンターを張り付かせるくらいの人だし』
「なんせあのアズカバンを脱獄したんだ」
シェーマスはまるで自分が成し遂げたことのように自信たっぷりに答え、「あとで貸すよ」と日刊預言者新聞をユイに渡す約束をとりつけた。
「ポッター、1人でブラックを捕まえようって思ってるのか?」
ドラコがテーブルの反対側へ身を乗り出した。
ドラコの目はギラギラと意地悪く光り、ハリーを見据えている。
「そうだ、その通りだ」
「言うまでもないけど、僕だったら、もうすでに何かやってるだろうなぁ。いい子ぶって学校にじっとしていたりしない。ブラックを探しに出かけるだろうなぁ」
「マルフォイ、いったい何を言い出すんだ?」
意地悪そうにほくそ笑むドラコにロンが乱暴に言う。
ドラコは薄青い目を細めて、ささやくように言った。
「ポッター、知らないのか?」
「なにを?」
「君はたぶん危ないことはしたくないんだろうなぁ。ディメンターに任せておきたいんだろう?僕だったら復讐してやりたい。僕なら、自分でブラックを追い詰める」
「いったいなんのことだ?」
ハリーが怒った。
しかし、その時スネイプの声がした。
「材料はもう全部加えたはずだ。この薬は服用する前に煮込まねばならぬ。グツグツ煮えている間、後片けをしていたまえ」
生徒達が片づけを始める中、ユイはじっと中空の一点を見つめていた。
→08.まね妖怪