アズカバンの囚人
□07.縮み薬
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ユイがスネイプに遅れた事情を話す間、パンジーはすかさずドラコに擦り寄っていた。
「ドラコ、どう?ひどく痛むの?」
「ああ」
ドラコは勇敢に耐えているようなしかめっ面をした。
隣に立っているユイはケロッとしているため、大げさに言っているとしか思えないとハリーは思った。
その証拠に、パンジーが目を逸らした隙にドラコはクラッブとゴイルにウインクをしている。
「いつまでもそこに立っていないで座りたまえ、さあ」
スネイプが言うのを聞いてハリーとロンは腹立たしげに顔を見合わせた。
遅れてきたのが自分達だったらあんな対応はしないはずだ。
でもこれで今日の残りの時間は安泰だと思った。
スネイプが誰かに嫌味を言おうとすると、すかさずユイがスネイプを呼び止め質問攻めにするからだ。
ハリーはユイに一緒のテーブルで作業をしてもらいたかったが、ユイはハーマイオニーとネビルのテーブルにつき鍋を据えた。
ハリーとロンのすぐ隣にはドラコが座り、3人とも同じテーブルで材料を準備することになった。
「先生」
ドラコは席につくなりスネイプを呼んだ。
「僕、雛菊の根を刻むのを手伝ってもらわないと。こんな腕なので――」
「ウィーズリー、マルフォイの根を切ってやりたまえ」
スネイプはロンを見もせずに言った。
ロンが赤レンガ色になり「お前の腕はどこも悪くないんだ」と歯を食いしばると、ドラコはテーブルの向こうでニヤリとした。
「ウィーズリー、スネイプ先生がおっしゃったことが聞こえただろう。根を刻めよ」
『かしてドラコ、私がやってあげるから――あ、ネビル、ネズミの脾臓は、1つでいいのよ』
「え?ユイ?って早!……僕15分もかけて刻んだんだよ?」
隣のテーブルからやってきたユイは、またたく間に雛菊の根をきれいに切りそろえた。
風のように去っていくユイを、ロンもドラコもぽかんと口を開けて見ている。
だがすぐに気を取り直したようにドラコは底意地の悪い笑みを浮かべた。
「先生、それから、僕、この“萎び無花果”の皮をむいてもらわないと」
「ポッター、マルフォイの無花果をむいてあげたまえ」
『はい。ドラコの分もむいておいた――ネビル、ヒルの汁はほんの少しだからね。気をつけて』
「いつの間に!?」
先程までネビルの隣にいたユイは、瞬間移動のようにドラコの横にいて、無花果を渡したかと思えばまたすぐにネビルの隣に戻っていった。