アズカバンの囚人

□04.新任の先生
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騎士団のメンバーから直接教われる機会などめったにない。

ダンブルドアによるハグリッドの紹介を右から左へ聞き流しながら、ユイはリーマスに何を聞きに行こうかと頭の中でやりたいことリストをめくった。



「なるほどね。あんな馬鹿げた本を教科書に指定するなんて、まともな人間のすることじゃないとは思ってたんだ」

「ホント、ドラコの言うとおりだわ」



ドラコとパンジーがハグリットの悪口を言うのも聞き流す。


(パトローナムは使えるようになりたいけど、リーマスの元に行く前にまずは発音練習が必要ね)


「あの木偶の坊がまともに教えられると思うか?」

「ぜーんぜん思わないね」


(脱狼薬を試すのはさすがに失礼だし危険よね。砂糖以外で甘くして効果があるか確かめたかったんだけど……)


「父上がいらっしゃったら、あんな2人を教師になんてしなかったのに……ユイ、さっきから食が進んでないけど食欲ないのか?」



上の空でタルトを細かくフォークで切り分け続けるユイを見てドラコが心配そうに覗き込み、パンジーは面白くなさそうにする。



「ほっときなさいよドラコ、色ボケしてるだけよ」

「は?誰が?誰に!?」


(やっぱり無詠唱呪文かな?使えるようになったら発音も気にしなくてよくなるし)


「ユイ!」

『え?何?ごめん聞いてなかった』



ガチャンという食器がたてる音に我に返ると、ドラコがわなわなと震えていた。



「何かあったとは思ってたが、そんな……確かに指輪は送られてきたけど……だって本気じゃないって……」

『指輪?何が本気?』

「ユイがドラコのお父様に」



パンジーはかぼちゃタルトを食べながら澄ました顔で言った。



『は!?』

「何考えてんだユイ!僕の父上だぞ!」

『ドラコこそ何考えてんのよ!そんなことあるわけないでしょ!?』

「違うっていうなら誰に夢中なんだか言ってみろよ!」

『なんで私が誰かに夢中になってる前提なのよ!そんなこと私一言も言ってないわ』

「君は隠し事ばかりじゃないか!」

『何それ。今は関係ないでしょ!それに誰にだって隠したいことの1つや2つあるわよ』

「君の場合多すぎるんだ!」

『多くないわ!』

「多い!」

「――諸君」

『「――ッ!?」』



ぎゃあぎゃあと騒いでいた2人は、地を這うような寮監の声で同時に黙った。



「いつまで騒いでいるつもりかね?」



大広間を見渡すと、もう他の生徒達の姿はなく、ガランとしていた。

酔っぱらったハグリッドを介抱するマダム・ポンフリーと、こちらを見て肩を震わせているリーマス以外誰もいない。

去年も同じような状況になったことがある気がする。


(パンジーも帰ってるし!!)


「我輩が君達の立場なら、今すぐ口を閉ざして寮に戻るのだが……どうかね?」



ユイとドラコは同時に勢いよく首を縦にふり、機嫌の悪い寮監の鉄槌が降りないうちにそそくさと寮へ駆け戻った。





05.占い学
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