アズカバンの囚人

□03.吸魂鬼
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9月1日。

ユイはドラコと一緒にキングズ・クロス駅に立っていた。

1回くらいみんなと一緒にホグワーツ特急で学校へ行ってみたいとダダをこね、なんとか(ルシウスの権力を借りて)スネイプを説得したのだ。



『重い……』

「早くしろ。コンパートメントがなくなる」

『走ったら母上様がやってくださった髪型が崩れちゃうわ』

「だからお前の母上じゃないだろ」



今日のドラコは朝から機嫌が悪い。

ユイは手ぶらだと浮くなと思い、ドラコの荷物を持つのを手伝うと言ったのだが、なぜか全部の荷物を持たされていた。


(エスコートはどうした英国紳士Jr!)


荷物を預け、大またで歩くドラコに続いて列車に乗り込むと、すぐにパンジーに会った。

先に乗って席を取っていたらしいクラッブとゴイルの元へ案内される。

コンパートメントに入ると、すでに2人はお菓子を広げて食べ始めていた。



「ドラコ、元気だった?」



パンジーがすかさずドラコの隣に座りしなを作って話しかける。

ドラコは「ああ」とぶっきらぼうに答えただけで、足を組み、頬杖をつきながら窓の外を見て舌打ちをした。



「どうしたの?――ユイ、あんたまさかドラコに何かしたんじゃないでしょうね」



ふてくされるドラコとは対照的に満面の笑みを浮かべるユイをパンジーがキッと睨みつける。



『ちょっと勝負をね』



ドラコと同じ方向を覗き込むと、ウィーズリー一家がモリーから順番にサンドイッチを受け取っていた。

アーサーがハリーを柱の影に呼び出すのが見える。

「ブラックを探すな」と忠告しているところだろう。

ハリーの顔に驚きと困惑の表情が浮かんでいる。



「勝負?」

「あんなのまぐれだ」

『まぐれでも1勝は1勝よ』



昨日の夜、最後の勝負をしたときに、あせって間違えてコマを動かしてしまったのが功を奏し、ユイは奇跡的にドラコに勝つことができたのだ。



「ふうん、そんな約束無視しちゃえばいいじゃない」

『ちょっとパンジー余計なこと言わないで!ドラコ、男に二言はないわよね!?』

「ああ……」

「要は“ユイの前でドラコがポッター達に絡まなきゃ”いいんでしょ。じゃあ1週間私が代わりにやつらと遊んでやるわ」

『えええっ』



意気込むパンジーに何か企みを思いついたのか、ドラコはニヤリと笑った。


(ちょっとちょっと、面倒なこと起こさないでよね)


思いもよらない伏兵の登場にユイはまたしても余計な気苦労が増えてしまった。

面倒なことが起こりそうな予感に、時間があるうちに少しでも勉強しておこうとあくびをかみ殺しながら教科書を開いた。




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