アズカバンの囚人

□02.真夏の夜の夢
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ドラコの部屋を通り過ぎたユイは、階下に人の気配を感じ、家の主の帰宅を知ると方向転換して階段を下りた。



「おや、ユイ久しいな。美少女に迎えられると疲れも吹き飛ぶね。わざわざ私を待っていてくれたのかな?」



ユイの姿を見るとルシウスは笑みを浮かべた。

遅い帰宅にしては疲れも見えず、何やら楽しそうだ。

――もっとも、演技かもしれないが。



『天体観測をしたかったんです。窓からではよく見えないので屋上に出たかったんですが、どこから行けばいいかわからなくて……ドラコを起こすのも悪いので教授にお聞きしようかと思ってたらルシウスさんが帰宅される音が聞こえたので』

「夏休みの課題かい?」

『ええ、まあそんなところです』

「どういうことだMs.モチヅキ。課題はすべて済ませたのではありませんでしたかな?」



突然割って入った低い声に驚き振り返ると、眉間に皺を寄せたスネイプがゆっくりと階段を下りてきていた。



『お、終わらせましたよ!見せたじゃないですか!でも、せっかくなので本で調べるだけじゃなくてちゃんと観測もしようかと……』



スネイプに睨まれ、ルシウスの影に隠れるユイの肩へルシウスが手をのせる。



「おいで。私が案内してあげよう」

『えっ、そんな。帰ってきたばかりだというのに悪いです!』

「そう気を使うものではない。……セブルス、かまわないね?」



ユイの肩を抱き、振り返るルシウスにスネイプは眉間の皺を深めた。

かまわないわけがない。

だが、ダメだと言ったところで、ルシウスは人の話を聞くような人ではないことも嫌というほど知っている。

スネイプが黙っているのを了承と取り、ルシウスはユイを連れて屋上へ向かった。



***



周りに民家のないマルフォイ邸の屋上からは、広い星空がよく見えた。

レポートと照らし合わせながら空を見て、ひときわ明るく輝く一等星に自然と目が行く。


(シリウス……)


ハリーとはもう会っているはずだ。

今頃どこにいるのだろうか。



「ドラコが言っていた通り、ユイは天文学が好きなのだな」

『はい。天文学と魔法薬学が好きです』



あとは1人で大丈夫だとユイは言ったが、ルシウスは屋内に戻らずずっとユイを眺めていた。

正直気まずい。



「闇の魔術に対する防衛術は?」

『興味はありますが、好きとは少し違います』

「ほう……興味がね――なぜ?と聞いてもいいかな?」



ルシウスの目が細められる。

後ろで見ていたルシウスは、いつのまにかユイの横に立っていた。


(なんかいつもと声色が違う)


どうしてそんなことを聞くのだと言おうとしてユイはやめ、口を閉ざした。
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