アズカバンの囚人
□01.魔法使いの弟子
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そして8月1日。
ユイはスネイプと共に1年ぶりのマルフォイ邸を訪ねた。
2人が姿現しで門前に現れると、父親譲りのきれいなプラチナブロンドをもったドラコが玄関先から駆けてくる。
オールバックはやめたらしく、真ん中で分けたさらさらの前髪がなびいていた。
『ドラコ久しぶり。また背伸びた?』
「そういうユイは少し痩せたか?」
『そう?教授のスパルタ受けてたからかな』
「人のせいにしないで頂きたい」
『うひゃ!教授、耳元でしゃべらないでください!』
「我輩はもう行くが、くれぐれも余計なことをせんように」
『はーい』
手を振って見送るユイをドラコは不思議そうに見る。
いつの間にこんなに仲良くなっているのだと聞くと『師弟だからね』と返され、ドラコはますます混乱した。
***
ドラコに案内された屋敷の中は1年前となんら代わりはなかった。
ドビーを失ったことによる弊害は見られない。
『ルシウスさんとナルシッサさんは?』
「2人とも外出中だ」
『あら、じゃあ今ドラコだけ?』
「……そうだな」
変に意識させてしまったらしく、ドラコは少し気まずそうにした。
たいした荷物もないため、部屋に案内されたはいいが特にやることがない。
ルシウスがいれば呪文を教えてもらうなり本を貸してもらうなりするのだが、不在なら仕方がない。
ユイは応接間でドラコと雑談をして過ごすことにした。
『最近ルシウスさん忙しいの?』
「そうみたいだ。そのうえポッターのやつが余計なことをしてくれたおかげで、父上は最近機嫌が悪い」
『屋敷しもべいないと家事とかいろいろと大変だもんね』
「……なんで知ってるんだ?」
(う、しまった!)
ドビーを失った場面にいたこと――秘密の部屋の中に連れ去られたことは、全校生徒には伏せられている。
当然、ドラコも知らないことだった。
『あ、あれ?ドラコが学校でぶつぶつ言ってなかったっけ?』
「言ってたか?」
『うんうん、ルシウスさんが理事を降ろされたって話のときに確かそんなことも言ってた気がする』
「そうか。まあ、とにかくそういうわけで家にいるときもずっと不機嫌で母上も参ってる」
まだ怪しんでいる表情はしていたが、思い出したら腹が立ってきたのか、ドラコはハリーへの悪態をつき始めた。