秘密の部屋

□12.狂ったブラッジャー
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次の日、結局ドラコには何も聞けないまま試合が始まってしまった。

試合が始まると、まもなくしてブラッジャーがハリーを襲い始める。


(ああもうっ、ドビーどこにいるのよ!)


教員席にいるスネイプを探すのとはわけが違う。

小さな屋敷しもべ妖精を超満員の観客席から見つけることなど、砂漠に落とした星の砂を見つけるくらい難しい。



『あ、危ない!』



くだらない例えに思考を費やしている間に、ドラコは箒から投げ出され、ブラッジャーはハリーの右腕を砕いた。

ハリーがスニッチに左手を伸ばすのを見て、こうしちゃいられないとユイは急いで競技場へ向かった。


映画版なら、試合終了後もブラッジャーがハリーを襲うはずだ。

万が一ハーマイオニーが間に合わなかったときのためにとそっと杖を準備した。







「フィニート・インカンターテム!」



ハーマイオニーの声が競技場に響き、ブラッジャーはハリーの5mほど上空で粉砕された。

駆け寄るグリフィンドール生にまぎれ、ユイも杖を袖の中に隠し持ってハリーの元へ向かう。

もちろん、ハリーの骨を守るためだ。

ロックハートとは授業以外で関わりを持ちたくなかったが、ここばかりは止めてあげないとハリーがかわいそうだ。



「ハリー、心配するな。私が君の腕を治してやろう」

「やめて!」



嫌がるハリーをあやすような声で横になるように言うロックハートに近づくため、ユイはそっと人垣の隙間を縫っていった。



「大丈夫。この私が、数え切れないほど使ったことがある簡単な魔法だからね」

『わあ、すごいですねロックハート先生!どんな魔法なんですか?その魔法、私にもやらせてくださいなっ』

「ユイ!?」



グリフィンドールの集団の中に突如現れたスリザリン生に、驚きの声があがる。



「ユイ、君が僕を尊敬して止まないことは最初から分かっていたよ。でも、これはとても危険な魔法なんだ。失敗するわけにはいかない――わかるね?」

『でも、試してみたいんです』



ダメですか?とかわいく首をかしげるユイにロン、ハーマイオニー、そしてフレッドとジョージは口をあんぐりとあけた。


(ユイがブリっこしてる!?)


ハリーはあまりの驚きで腕の痛みさえ一瞬わすれた。

自分と同じようにロックハートの視界に映らないように行動しているユイが、自らロックハートの前に出てくるとは、夢でも見ている気分だ。



「仕方のない子だね。危険だと言ったのが分からなかったのかな?」

『先生のご指導があれば大丈夫です』

「それではこうしよう。私が今見本を見せる。そして君があとで私の前で試す――そう、君だけのために特別に、授業を開いてあげよう」



きらっと白い歯を輝かせ、ロックハートがユイにウインクをした瞬間に、顔の前で手の平を合わせ、笑顔を向けていたユイの頬がひきつったのをハリー達は見逃さなかった。



『わ、わあ……うれしいですわ。でも、そんなに難しいのでしたら、今すぐ医務室に連れてくべきでしてよ?――うん。それがいいわ、そうしましょう!』


(何その口調!)


ロックハートは微塵も気にしていないようだが、誰もがユイは頭でも打ったのではないかと心配をした。
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