秘密の部屋

□12.狂ったブラッジャー
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無視されたロンは図書館まで追いかけてユイに声をかけた。



「ユイ?」



真剣な表情でページをめくり続けるユイにロンが遠慮がちに話しかける。

後ろに立つハーマイオニーの手には古びた分厚い本がある。


(ハーマイオニーは無事に成功させた――僕だってやってやる)


ロンはごくりと唾を飲み込んだ。



「やあ、元気?」

『元気だけど……どうしたの?』

「どうしたの、はこっちのセリフだよ。授業の時から、その、なんていうか……君、変だったから……」



ロンは「あー」とか「えー」とか頭をかきながらいくつか言葉になっていない声を出した後、決心したように口を開いた。



「この前の事件のことと何か関係があるのかなと思って……そう、例えば――マルフォイが何か言ってる……とか?」



口ごもりながら言うロンにユイは首をかしげる。

様子を見ていたハーマイオニーが「じれったいわね」と言ってロンを押しのけた。

いつの間にかハリーもいる。



「気を悪くしないでほしいのだけど……あいつが、秘密の部屋をあけたのは自分だって言ってるのを聞かなかった?」

『それ、私が“ドラコじゃない”って言ったら信じてくれる?』

「それは……」



3人は顔を見合わせた。

あわよくばユイが話してくれればいいなとダメもとで聞きにきたのだが、否定されたところではいそうですかと納得するはずもない。

だからこうしてポリジュース薬の作成も同時進行しているのだ。



『自分達が納得いくまで、納得のいく方法で調べたほうがいいと思うわ』



ハリー達の心を見透かしたかのように笑顔で言うユイに3人は返す言葉がなくなる。



「あー、えーと……そうだね、そうするよ」

「ロン、もう行かなきゃ」

「あ、うん。ユイ、またね」



図書館にドラコが入ってきたのを見て、あわてて3人は本を隠して出て行った。







「あいつらと何を話してたんだ?」



3人が去った方向を見ながら、顔をしかめて嫌そうな表情でドラコが尋ねる。



『秘密の部屋(をドラコがあけたかどうか)について知りたがってたから、自分達で調べたらって言ってただけよ』

「ふぅん」

『ドラコこそどうしたの?1人で図書館に来るなんて珍しいわね』

「……」

「あんたが寮に戻ってこないからわざわざ探しにきてあげたのよ!明日はクィディッチの試合――ドラコの初試合なのよ!?みんな宿題を早く片付けたがってるってのに、何してるのよ」



どうやら1人ではなかったようだ。

ドラコは何か言いたそうだったが、横からパンジーに口を挟まれて黙った。



『え、宿題?……私、ロックハートについての詩なんて書けないわよ』

「……それはもう完成しているから大丈夫だ」

「誰もあんたにそんなの期待してないわ」



いいから早くしてとパンジーに手を引かれ、ユイはスリザリンの寮へ強制的に戻された。

談話室の机の上にはロックハートを賛辞する詩がたくさん並べられていた。

ミリセントがたくさん書いたらしい。


(恋する乙女の妄想力はすごいわね……)


ユイは苦笑いをして、どれでも好きなのをどうぞとばかりに大量に置かれた詩のひとつを拾い上げ、代わりに魔法薬のレポートに使える文献を何冊か机の上に広げた。



『さあ、ちゃっちゃと片付けるわよ』

「遅れてきたお前が言うな」

「文献じゃなくてレポート見せろよ」

『あ、ちょっと!』



ユイのレポートを丸写ししようとするクラッブから羊皮紙を取り上げたり、うたた寝を始めるゴイルをたたき起こしたり、お菓子に手を伸ばす2人を注意したりとユイは対応に追われ、結局ドラコが何を言いかけたのかは分からずじまいだった。


(まあいっか。明日聞いてみよう)



***
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