賢者の石

□04.それぞれの思い
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スネイプは、不審者をダンブルドアに引き渡した後、先ほどの言葉の意味を頭の中で繰り返し考えていた。


(あんな小娘がなぜ我輩を知っている)


いったい誰から聞いたというのだ。

あの顔はどう見ても東洋人の顔だ。

自分には東洋人の知り合いなどいない。


(会いたかっただと?)


なぜだ。

何のために。


(ずっと好きだっただと!?)


会ったこともない人間に好意を寄せるとは、頭がおかしいとしか考えられない。

自分が子どもに好かれる要素など何ひとつも持ち合わせていないことくらいわかる。

だいたい“ずっと”とはどういうことだ。


10も行かないような初対面の子どもに、突然愛の告白をされたセブルス・スネイプはかつてないほど混乱していた。


しばらくして出てきたダンブルドアの「知り合いの娘じゃ」という説明などに納得するわけもなかったが、強引に押し切られ、転んで肩を負傷したらしいユイ・モチヅキを医務室へ運ぶという仕事を押し付けられた。



「……おい」



さきほどとは打って変わって押し黙る憔悴しきった顔を見ると、ぶつけたのは肩ではなく頭なのではないかとさえ思える。

不信感をたっぷり抱きながらベッドに寝かせたところで、いつの間につかんだのかローブの端をしっかりと握られていることに気づいた。



「離せ」



いっこうに起きる気配もローブを離す気配も感じられない。



「……チッ」



いつまでもここで時間をつぶすわけにもいかないので、あきらめてローブを脱いで置いていくことに決める。


(この小娘が来たせいで今日は散々だ)


言葉とは裏腹に口の端が少し上がっていることにスネイプは気づいていなかった。





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