賢者の石
□04.それぞれの思い
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次の日、ユイが起きると殺風景な医務室が目に入ってきた。
目が覚めたらいつもどおりの生活に戻っている、という淡い期待は見事に裏切られた。
いまだに信じられないが、自分はホグワーツの世界へきてしまったのだ。
既に“夢ではない”という事実を受け入れ始めている自分の適応力の高さに我ながら驚かされる。
ユイは誰もいない医務室で悩みに悩み、そして、前を向いて進もうと決心した。
ダンブルドアは未来を知っているユイに、やりたいようにやれと言った。
何ができるかなんてわからないが、あの悲しい未来を少しでも変えられたらと思った。
『よし!』
拳をにぎり、小さく両手でガッツポーズをして気合をいれると、狙ったかのようなタイミングでダンブルドアが現れた。
「ユイ、気分はどうじゃ?」
『大丈夫です!今ちょうどダンブルドア先生に会いに行こうと思っていたところなんです』
「ほほ。元気そうでなによりじゃ」
目を細めて笑うダンブルドアに、今年はハリーが入学する年だということ、ユイも新入生として受け入れてくれるということ、寮が決まるまで北の塔を使っていいということを教えてもらった。
「ところでユイ。食欲はあるかの?話がてら朝食でもどうじゃ?皆に紹介もせねばならん」
まだまだ相談したいことはたくさんあったが、そういえば昨日から何も食べてないと思ったユイを急に空腹が襲う。
あとでお腹がなるのも恥ずかしいし、せっかくの厚意に甘えることにし、魔法で出された服に着替えてダンブルドアの後に続き大広間へ向かった。
*
「ところでそのローブはどうしたんじゃ?」
『起きたらかかってたんです』
「おおかたセブルスがかけてくれたんじゃろう。彼はああ見えて優しいところもあるからの」
『ふふっ。そうですね。私スネイプ先生大好きです』
「ほほ!それは楽しみじゃ」
今にもスキップを始めそうなテンションのダンブルドアのあとに続きながらユイはそっとローブを握り締めた。
(やれるだけのことはやろう。私が、守ってみせるわ)
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