アズカバンの囚人
□19.スネイプの恨み(前編)
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グリフィンドールがレイブンクローに勝利した夜は、もうクィディッチ優勝杯を取ったかのようだった。
試合が終わってから1日中、そして夜になってもパーティは続いた。
フレッドとジョージは1・2時間いなくなったかと思うと、両手いっぱいにバタービールの瓶やら、かぼちゃフィズ、ハニーデュークス店の菓子が詰まった袋を数個、抱えて戻ってきた。
ジョージが蛙ミントをばら撒き始めたとき、アンジェリーナ・ジョンソンが甲高い声で聞いた。
「いったいどうやったの?」
「ちょっと助けてもらったのさ。ムーニー、ワームテール、パッドフット、プロングズにね」
フレッドがハリーの耳にこっそり囁いた。
ハリーは笑顔で応えながらも、何か胸にひっかかるものを感じていた。
「そういえば僕、“パッドフット”って名前聞いたことがあるような気がするんだ」
思い切ってフレッドに打ち明けると、フレッドは神妙な面持ちをした。
「奇遇だな。俺もワームテールなら聞いたことあるような気がする」
「フレッドそれ本当!?」
「ああ。あれは確か……そうだ、魔法薬の授業でお世話になった」
「え。まさか、ネズミの尻尾とかトカゲの尻尾とかじゃ……」
フレッドの顔はもうにやけていた。
「そうともいう。“聞いたことがある気がする”なんてあいまいなものはたいていそんなもんさ!」
「そうだぞハリー、我らは今祝杯を挙げているのだ。虫の尾や肉球に気をとられている場合ではない!そう、我々は勝利を収めたのだ!」
ジョージが咳払いとともに、ウッドの口調を真似ながらやってきた。
バタービールの瓶を数本抱えている。
フレッドとジョージは顔を見合わせるとウインクをし、瓶を持ってテーブルの上に上がりみんなの注目を集めて曲芸を始めた。
(パッドフット……肉球……違うと思うんだよなあ)
ハリーはうなった。
“パッドフット”という単語は名前として聞いたことがあるような気がしてならなかった。
でもいつ聞いたのかがまったく思い出せない。
思い出せないということは、フレッドとジョージの言うとおり、思い違いかもしれない。
こんな楽しい夜に不確定なことで頭を悩ませるのは馬鹿げている。
そう思ったハリーはパッドフットのことを忘れ、マクゴナガル先生がタータンチェックの部屋着に、頭にヘアネットという姿で現われ、全員もう寝なさいと命令するまで祝賀会を楽しんだ。
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