アズカバンの囚人

□18.グリフィンドール対レイブンクロー
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魔法史の教室を出たユイは、すぐにスネイプと鉢合わせした。

腕を組んで壁際に立っているところを見ると、鉢合わせと言うより待ち伏せされていたという表現のほうが正しいかもしれないなとユイは思った。



「確か昨日、君は我輩にパトローナスの練習をすると言ったはずだが――我輩にはとても練習が必要だとは思えませんな」

『いや、私の練習ではなくて、ハリーの練習って意味で……』



手を振り慌てるユイを尻目に、スネイプはユイの横に控える白銀色の生物を見て目を細めた。



「ユニコーンか?」

『あ、はい。ユニっていいます。どうぞよろしく』



ユイが頭を下げると、守護霊も同じように首を垂れた。



「パトローナスに名前をつけるなど……」

『まあいいじゃないですか。それよりどうしたんですか?』

「……話がある」



思い出したかのように言うと、スネイプは真面目な顔でユイの腕をつかんで近くの空き教室の中へ連れ込んだ。



『え?――ちょ、スネイプ先生!?』



状況がつかめないユイを無視して教室の鍵を閉めたスネイプが、ユイの目の前に1枚の黒い紙切れを押し付ける。

よく見るとそれはただの紙ではなく、封筒だった。


(ルシウスからの返事!?)


差出人の名前を見なくてもわかる。

銀の紋が入った真っ黒な封筒は、ドラコがよく手にしているものと同じだ。



「今朝届いた。フクロウがさまよっていた故、我輩があずかった」

『――中身見ました?』

「やはり、見られては都合が悪いものなのだな?ご丁寧にもルシウス殿は他の者が開けられぬよう呪いをかけておいでだ」



嫌味ったらしく言い、スネイプは今この場で封を切るよう指示した。


(目の前で開けたら呪いの意味ないじゃん……)


朝食に行かなかった自分が悪いのだが、他の人が触れたら燃えてしまう魔法をかけてくれればよかったのに……と、ルシウスを恨みながら封を切る。

封筒は何事もなく開き、上質な羊皮紙が2枚出てきた。



「開いて読み上げろ」

『親愛なるユイへ――……あの、だいぶ恥ずかしいんですが』

「いいから読め」

『ぷ、プライバシーは……』

「我輩は気が長いほうではない」



封筒に向けていた杖で顔を指され、先を促される。

ユイは観念して手紙を読み始めた。



親愛なるユイへ――



 こんなに気持ちが高ぶったのはいつ以来だろうか。

材料の件以外でまさか君のほうから手紙をよこしてくれる日が来ると夢にも思っていなかった。

しかし、私は今正直戸惑っているよ。

ケガをしたことを知らせてきた君が、今度は裁判をやめてくれとは……。



 ちかづいただけで攻撃してくるような危険な生物を野放しにしておくことになんの意味がある?

ぜひとも直接会って話がしたい。

君がクリスマス休暇に我が家に来てくれれば話は早かったのだが、過ぎてしまったことを言っても仕方がない。



 らいねんは是が非でも我がマルフォイ家のクリスマスパーティーに来て欲しい。



 がっこうに残るより、私の家にいたほうが有意義な時間を過ごすことができる。

それに、うちには野蛮な獣などいないからね。



 わたしが言いたいことがわかるね?

頭だけになればヒッポグリフも君を襲うなど愚かなことは考えまい。

このくらいは求めてしかるべきだ。



 へんに情けをかけぬことだ。

よもやあの森番をなぐさめるために毎日通ったりしていないだろうね?



 つめたい冬の乾燥した空気で君の愛らしい唇が切れてしまっていないか心配だ。

おっと、話がずれてしまったね。



 けつろんを急ぐ気持ちはわかるが、裁判まではまだ時間がある。

それまでじっくり考えることとしよう。

ただ1つ言えるのは、私の愛しいユイを傷つけたものをそう易々と許す気持ちはないということだ。

ユイも私の気持ちをわかって欲しい。

ではまた聴聞会で会おう。



      ルシウス・マルフォイ
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