アズカバンの囚人
□06.魔法生物飼育学
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森の端に添って歩き、ユイたちは“魔法生物飼育学”の最初の授業に向かった。
木々の間から雨上がりの夏の暑い日ざしが降り注ぐ。
「どんな授業になるのか見ものだな。あいつにまともな授業ができると思うか?めちゃくちゃに決まってるさ。どうせうまくいかないに決まってる」
ドラコは歩きながらクラッブとゴイルに絶えずしゃべり続けている。
ハリー達へ絡むことができず、ストレスが溜まって仕方がないのだろう。
誰かしらの悪口を終始2人に言っていた。
「そうだ、このろくでもない授業でポッターが死ぬんじゃないか?だったら傑作だな」
クラッブとゴイルがゲラゲラと笑った。
聞くに堪えないセリフだが、意味もわからず馬鹿笑いするだけの2人にぐちぐち言うだけならかろうじて目をつぶれる。
このままおとなしくしていてくれれば、ケガをさせずにすむのではないか――そんな淡い期待が膨らむ。
「さてと、おしゃべりをやめてここに集まれ。49ページを開いて」
ハグリッドが手を叩きながら得意気に言った。
初めての授業――初めての“先生”で張り切っているのがよくわかる。
「開けっていったって……」
「どうやって開くんだ」
「フン、そんなことも知らないのか?」
あちこちから聞こえる戸惑いの声に、ドラコが偉そうにふんぞり返って「背表紙をなでればいいだけだ」と答えた。
(自分も知らなかったくせによく言うわ!……って、私も原作読んでなかったら知りようがなかったけど)
「背表紙をなでるだけ、ですって?」
ハーマイオニーが高い声を出して驚いた。
本の開け方自体よりも、自分が知らないことをドラコが知っていたことの方が信じられないようで、ドラコと本を交互に見ている。
ハリーとロンも何かの罠ではないかと疑い顔を見合わせユイを見た。
(そこまで信用無いのかなぁ)
ユイが苦笑いをしながらやって見せると、ようやくスリザリン以外の生徒達も教科書を開き始めた。
「この学校も落ちたものだな!あんなやつが教えるなんて父上が聞いたらなんておっしゃるか……」
「黙れマルフォイ」
調子にのったドラコは「ディメンターがいるぞ」と黒い帽子を被ってハリー達をからかって笑い、向こうからつっかかってきたんだと言わんばかりに眉を上げてユイを見た。
(ああもう油断も隙もない!)
ハーマイオニーに連れられていくハリーに目で謝罪しスリザリン生たちの帽子を叩き落とした。