アズカバンの囚人
□02.真夏の夜の夢
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部屋に戻った後もドラコはなかなか寝付けないでいた。
昼間ユイに言えなかった言葉を1人布団の中で呟く。
「父上と、何かあったのか?」
ドラコが賭けにハリー・ポッターの名前を出したのにはわけがあった。
寝返りをうち、数週間前のことを思い出す。
*
休暇に入り、ドラコが家に戻るなり、ルシウスはユイのことを根掘り葉掘り聞いてきた。
手紙にも書いているのになぜ?と思いながらも学校での様子を話すと、ルシウスはしばらく考え込んだ後、意味ありげに「目を離すな」と言った。
「よいかドラコ、ユイから離れず、危険があれば守れ。そして、最大限に親しくなっておくことだ。ポッターやその学友に興味を持たせるでないぞ」
「父上?」
どうしてルシウスがこんなことを言い始めたのかドラコにはわからなかった。
言われなくてもユイを危険にさらす気はなかったし、険悪なムードになりたいとも思わない。
ポッター達と仲良くさせるだなんて聞いただけでも反吐がでる。
「それから、何かあればすぐに私に知らせなさい」
「はい。――ですが父上、なぜ突然」
「お前は知らなくてもよいことだ」
暗に質問も口答えも許さないと言われたのだとわかり、それ以上は何も言えなかった。
前々から指輪を贈ったりスネイプ先生との仲をからかったり父らしからぬ行動はしてはいたが、今回のように真面目な顔で話をされるのは初めてだった。
父とユイの間でいったい何があったのか。
秘密の部屋と日記の一件を知らないドラコはルシウスがなぜユイに執着し始めたのか理解に苦しんだ。
ピシャリときつい口調で言われた以上、ルシウスからそれ以上詳しいことを聞くのは不可能だとドラコは知っている。
(ユイに聞いたって無駄だろうな……)
仮に父とユイの間で何かがあったとして、今自分に知らされていないということは今後も知らされることはないだろう。
(……ユイ?)
ドアの外で足音がしてドラコは息を殺し耳をそばだてた。
ドアを開けに行こうかと身を起こしたところで、足音はパタパタと遠ざかっていく。
(こんな時間にどこへ……?)
足音からユイだと推測できる。
何か用事があって来たのだろうが、時間が時間なだけに躊躇したのだろう。
(まだ寝るような時間じゃないのに)
時計の針はまだ12時を回っていない。
学校の消灯時間は過ぎているが、現にドラコは起きていたし(寝れなかっただけじゃないぞ!)ユイも起きている。
ユイが起きている時間に自分が寝ているはずと思われているのが気に食わない。
それに、何を考えているのかわからないのも腹が立つ。
夏休みに入って1ヶ月間ホグワーツで暮らしていて痩せる理由など思いつかない。
何か無茶をしてるに決まっているのに、それを言わないユイにどうしても壁を感じずにはいられなかった。
(父上もユイも僕に隠しごとをする……僕だけ子ども扱いだ!)
イライラを枕にぶつけ、ドラコは頭まで布団をかぶり再び寝返りを打った。
***