青春応援歌〜オルタナティブエンズ〜

□10球目
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『士郎くんそろそろかな…』



午後の暖かい日差しの中、まちあわせ場所の雷門中の正門前に立ち、例の彼を待つ。

只今、待ち合わせ時刻5分前の14時。

この待っている時間はとても長く感じられる。

何しろ、男の子とこうして出掛けるのは初めてのこと。
あ、真一は幼馴染みだから、カウントしてないけど。


この時間の一秒毎に緊張が込み上げてくる。


その時、ふわっとしたいい香りが鼻を掠めると同時に、聞き慣れたあの声が耳に入る。


「おまたせ、花ちゃん。」


いつもの笑顔で微笑みかける士郎くん。

ふんわりと香るシャンプーの匂い。
練習後だから、シャワー浴びてきたのかな?


『あっ!!士郎くん、練習お疲れ様っ。』

「花ちゃんもお疲れ様。じゃあ、行こうか。」


そう言って、二人で肩を並べて歩き出す。


『ねえ、士郎くん。これからどこに行くの?』

「スポーツショップとかその他諸々かなっ。」

『それだったら、守とかと来た方が良かったんじゃない?あたし、サッカー用品ってあんまりわからないし…』

すると、彼は目を細めてニッコリすると、

「ううん。"花ちゃんだから"ついてきてほしかったんだ。」

と優しげないつもの声で言う。



"あたし…だから?"


そう疑問に思いつつも、その時は深くは考えなかった。





二人で商店街にあるスポーツ用品店のペンギーゴに向かう。

店内にはサッカーを始め、バスケ、テニス、ラクビー…色々なスポーツグッズがところ狭しと並んでいる。


『今日はなに買うの?』

「新しいスパイク買おうかなって。それで、花ちゃんにも一緒に選んで欲しいんだっ。」


嬉しそうに言う士郎くん。
ピッチにいる時の彼はカッコいいけど、こういう時の嬉しそうな彼は思わず可愛いなって思う。


そして、スパイクを選び出す彼。


「んー、このデザインもいいんだけどこっちの色もいいなあ…」

『士郎くんはこっちが似合いそうっ。』

あたしは彼が片手に持っていた青と白が基調のスパイクを指差す。

「本当!?じゃあ、花ちゃんがそう言うならこっちにするね!!」

彼はとても嬉しそうに言った。


その後も他に練習用ウェアを見たり、サポーターを見たり、はたまた他のスポーツのグッズを見たり、結構な時間をスポーツ用品店で過ごした。

そして、会計を終え、ペンギーゴを出る。

「少し疲れちゃったね。カフェにでも行こうか。」

士郎くんが言う。

『うんっ。そうしよ♪』

あたしはそう答え、ちょうど近くにあった可愛らしいカフェへ二人で入った。





…が。




「「「いらっしゃいませご主人様、お嬢様!!」」」






入るところを若干間違えたようです…
どうやらメイドカフェに入店してしまった模様。

来て早々引き返すことができず、呆気にとられたまま、席に案内される。

初めてのメイドカフェなのか、士郎くん心なしか楽しそうなので、まあいいんだけど。


とりあえず二人でケーキセットを選ぶ。
あたしはフルーツタルトとアイスココアのセット。
士郎くんはモンブランと紅茶のセットを注文する。

あたしもモンブランにしようか散々迷ったけどね(笑)

注文品が来る間、士郎くんと雷門中の話や士郎くんの白恋中の話をした。

話を聞いていると、みんな仲間思いなんだなって思った。
良いチームメイトに恵まれているんだね、と言うと彼はとても嬉しそうにうんっと頷く。

…てか、さっきから気になっていたんだけど、店員のメイドさんたちが士郎くん見てキャーキャー顔を赤らめてるのは気のせいですか?


すると、

「お待たせ致しました。こちらケーキセットになります。」

ケーキセットが運ばれてきた。

あたしたちの前にケーキと飲み物が置かれる。

そこでさっきのは気のせいじゃないと確信した。

運んできたメイドさん、帰り際にさっきからずっと士郎くんちらちら見てるし、なんかどことなく嬉しそう…


士郎くん、やっぱりモテるんだなあ…。
雰囲気も柔らかくて優しいし、なんせカッコいいもんね。
でも、ホントにカッコいいのはサッカーしてる時で…って何考えてんだあたし!!



「どうかしたの?花ちゃん。」


士郎くんが心配そうにあたしの顔を覗く。

『あ、え…いやなんでもないよっ!!』

慌てて繕い、持ってこられたココアのストローに口を付け、少し飲んで落ち着く。


でも、やっぱりなんかちょっと嫌だな、士郎くんがモテてるの見るの。




…何で嫌なんだろ?




そんなことを考えてると、



「ねえ、花ちゃんのそれ、一口ちょーだいっ。」


士郎くんが、あたしのココアを指差す。


『あ、うん。飲む?』


そう言ってココアを士郎くんに渡す。


すると、彼はストローをくわえ、一口飲むと、"ココアもおいしいねっ♪"と言って、ニコニコする。









…って。

えええー!!!!!!

ちょっとこれって、


か…間接キス…!?!?!?




思わずその場に固まる。


頭がそのことでいっぱいになっている中、突然、目の前にフォークに乗った一口大のモンブランが差し出される。



「はいっ。花ちゃん、ココアのお返しっ♪さっきモンブランと悩んでたよね?」


満面の笑みでこちらを見詰めてくる士郎くん。

…これはもしや。


「口開けて。あーん♪」



やっぱりねー!!



士郎くんのニコニコ攻撃に負け、ゆっくりと口を開けると口の中に栗と生クリームの甘い味が漂う。


「ね、おいしいでしょっ?」

『………ん///』


周りの注目を集めてしまったのもあって顔が真っ赤になり、少し俯き気味になる。

少し視線を上げて、目に映った彼の笑顔に更にまた顔の熱が上がった気がした。










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