青春応援歌〜オルタナティブエンズ〜

□7球目
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「では、これよりイナズマジャパンとネオジャパンの試合を始めます。」








いきなりすごい試合が始まりました…。


話の順を追うと、イナズマジャパンはオーストラリア戦、カタール戦で勝利。その激戦の間にチームに新たなメンバーの虎丸くんや飛鷹さんを迎え、試合の中で皆で成長しながら世界への挑戦を果たすべく、練習に意気込んでいました。
そこに突然、前にキャラバンで守たちの監督をしていた瞳子監督が、日本代表の座を奪うために、ネオジャパンを率いてイナズマジャパンに試合を申し込んできた…という訳です。


どうやらあの砂木沼という人…プレーからも日本代表への強い思いがうかがって見える。

それにしても、あの瞳子という監督は何故ここまで最強のメンバーを揃えてまで、イナズマジャパンに試合を挑みにきたんだろうか…。



「ダッシュストーム!!」



さすが代表を狙うだけあって実力もある。見事なボール裁きでイナズマジャパンのメンバーを翻弄していく。



そして…前半始まってまもなく








「ネオジャパン先制ゴォォォール!!」







ネオジャパンに先制点を取られてしまった…。





「くっそおー!!!!!」


悔しがる守を見た鬼道くんが


「大丈夫だ!!まだまだ時間はある。これから取り返すぞ!!」

と、皆に声を掛ける。



今までの試合やその行動を見て、彼がチームのゲームメイカー、即ち司令塔としての役割を担っているんだと確信した。




しかし、試合早々に先制点を取られてしまったプレーヤーのショックは大きい。
鬼道くんの指揮も十分に力を発揮できないまま、前半戦が終わってしまった。



プレーヤーたちにドリンクとタオルを渡しながら、考え込む。




アジア予選でもあたしは特にマネージャーとして役に立てなかった…。

これじゃ、せっかくマネージャーを任せてくれた夏未に合わせる顔がないっ!!

なんとかプレーヤーたちの動きを良くできないか…



ふと、試合前半を思い返し閃く。




………そうだ!!





あたしはベンチに座る久遠監督の元へ行く。


『ちょっと良いですか?久遠監督。』


「何だ、高嶺。」


『あの、後半の試合のことで提案があるんです!!』


監督の目をしっかり見つめ言う。


「…一体何だ?」


『それは――…』










「…確かにそれはチームの好機となるかもしれない。よし、選手たちを集めるからその提案を皆に伝えるんだ!!」


『…え、あたしが言うんですか?』


「高嶺が発案したのだから当たり前だ。」


『…はいっ!!』


こんなサッカー素人が皆に偉そうに提案できる立場じゃないけど、あたしだってイナズマイレブンジャパンの一員だって認めてくれた人がいるから…!!




「皆集まれ。これから高嶺からのアドバイスに従ってほしい。」



「「「花のアドバイスに…!?」」」


一同驚いた顔をする。



うっ…やっぱ皆こんなド素人のアドバイスになんか…
「よし!!皆!!花のアドバイスで後半逆転するぞ!!」


守が皆に声を掛ける。


「「「「「オーッ!!!!!!」」」」」


選手たちもそれに答える。



こんなに出会って間もないメンバーもみんな、あたしを信じてくれてるんだ…

そう思うと更にこのチームを勝利へと導きたいと強く思った。


「で、そのアドバイスって何だ?」

風丸が聞いてくる。


『えっと、前半での先制点のせいか皆の動きがいつもより悪くなってる気がするの。そこで、このチームのゲームメイカー、つまり司令塔の鬼道くんに提案があるんです。』

「何だ?」

鬼道くんが真剣な眼差しで見る。

…まあ、ゴーグルしてるから雰囲気なんだけど。



『鬼道くんにゴーグル外してもらいたいの。』


「「「鬼道のゴーグルを!?!?」」」


他のみんなも意外なアドバイスに驚きの表情を見せる。


「このゴーグルをか…?しかし、これは相手の動きをしっかりと押さえるためのもので…」


『でも、今のチームの状態は先制点のショックが大きく、焦りも見え始めて、みんなの意識に反して動きのまとまりがなくなっているの。だから、相手の動きを深く見るよりも、司令塔の鬼道くんがゴーグルを外すことで視野が格段に広がって、チームの動きを把握して的確な指示ができるんじゃないかって。』


「…確かに高嶺の言う通りかもしれんな…。」

鬼道くんはそう言うと、ゴーグルを外し、あたしに手渡す。

「これ、試合が終わるまで預かっていてくれないか?それと、アドバイス感謝する。」

ゴーグルを取った彼の切れ長な瞳は、あたしをしっかりと映していた。

『うんっ。このチームなら絶対、勝てるから大丈夫!!』

あたしは口元をニッと上げた。








すぐに後半戦が始まる。


「吹雪はそっちに付け!!」

「壁山、パスだ!!」

「みんな上がれ!!」


…的確な指示により、段々みんなの動きが良くなってきた。

さすが、鬼道くんだ。





そして…。





「行け!!豪炎寺!!シュートだ!!」








「イナズマジャパン、ゴォォォール!!!!!!」


その後、虎丸くんも順調にゴールを決め…








「試合終了ーっ!!!!2対1でイナズマジャパンの勝利だーっ!!!!」






イナズマジャパンは無事に勝利をおさめましたっ!!



「「「やったあ!!!!!!」」」


皆が勝利を喜び合う中、


「高嶺さん。」


ふと、名前を呼ばれ振り向くと…


『あなたはネオジャパンの…!!』


「はじめまして。あなたの話は聞いているわ。」


瞳子監督が立っていた。』


やっぱり近くで見るともっと綺麗。


「今回の後半戦からイナズマジャパンの動きが良くなったのは、あなたのアドバイスのお陰だと久遠監督から聞いたわ。」

『いやいや…あたしはただ、アドバイスしただけで動きがよくなったのは彼ら自身の力ですから。』

なんか照れ臭くて慌てて謙遜する。


「あら、そんなに謙遜することないのよ。実際、さっき久遠監督から聞いたけれどあなたの発案したアドバイスは素直にすごいと思ったわ。この発案はチーム全体を見れる人間じゃないと思い浮かばないと思うから。」


『そんなそんなっ…!!』

瞳子監督もかなりスゴ腕の監督だって守たちから聞いてたから、そんな人に誉めてもらえるなんて素直に嬉しい。


「…これで、イナズマジャパンは世界への挑戦の鍵を握ったわね…。」


何気ない瞳子監督の一言に気が付く。


…もしかして。



『…あの、瞳子監督はもしかして、イナズマジャパンが世界に通用できるように…今の弱点を気付かせるためにこの試合を…?』

そう言うと、瞳子監督はフッと笑って、

「…それとあともうひとつ。あなたの潜在能力を引き出すためよ。」

『…え?』

「では、またどこかで会いましょう。」

『…瞳子監督っ!!』

その呼び掛けに答えないまま、瞳子監督とネオジャパンは雷門中を後にした。




『…あたしの潜在能力…か。』
















試合の熱気も冷め、皆が合宿所に戻るなか、

「高嶺。」

『あ、鬼道くん!!』

そこには試合を終え、手元に戻ったゴーグルをまた付けていた鬼道くんがいた。

「今日のアドバイス、見事だった。サッカーは初心者なのだろう?」

『うーん、そうだね。大体ルールは知っているくらいで。』

「しかし、あの全体を見れるお前の洞察力と戦術には驚かされた。さすが、雷門中でトップを争うだけの頭脳だ。…とてもそうは見えないが。」

フッと鬼道くんが笑う。

『ちょっと!!最後のは余計でしょっ!!』

夏未と同じようなこと言うんだからー!!

「今回のチームの勝利は、勝利の女神が本当に微笑んだと言ったところだな。」

『…?』

「まあ、正確には、"勝利の女神がニヤッと不敵な笑みを浮かべた"と言うところだが。」


鬼道くんがからかうような口調であたしを見つめて言う。


あ…。




『…もしかして、あたしがアドバイスした時のこと言ってます?』


確かに、あたしはニッと口元が笑いました。


「さあな。」


そう言い、彼はまた笑うと身を翻して合宿所へと向かう。

もっともゴーグルの奥の瞳はもう見えないけど。


『ちょっと鬼道くんっ!!どういう意味なのよっ!!』



なんだか"ニヤっと不敵な笑み"と言われた恥ずかしさでいっぱいになって鬼道くんの後を追いかけた。

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