青春応援歌〜オルタナティブエンズ〜
□4球目
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「では、今日の練習はここまでとする!!明日は早朝6時から練習を始める。遅れないように!!以上!!」
久遠監督が今日の解散の号令をかける。
因みに何故こんなに朝早くから練習を始めることができるのかと言うと、この日本代表チームの練習は雷門中の敷地内にある合宿所で泊まりがけで行われているから。
勿論、あたしたちマネージャーもこの合宿所で泊まり掛けで部員をサポートする。
今日の練習が終わり、選手たちと言うと合宿所へと歩き出す者もいれば、残ってグラウンドで自主練をする者もいる。
マネージャーの皆で後片付けを終え、合宿所に戻ろうとすると、ふとある選手が目に入った。
両サイドが外にハネた赤色の髪に、サッカー少年には珍しい真っ白な肌。
その彼が放つシュートに思わず息を飲み、足を止めた。
まるで夜空を駆ける、流れ星のような…。
その流星のようなシュートは力強くゴールネットを揺らした。
なんだろう…。
ドキドキした…恋した時に似た胸の高鳴りを感じた。
…と、ずっと見てたせいか彼もこちらに気付いたのかぱちりと目が合うと、こちらに向かってゆっくりと歩いてくる。
「どうしたの?キミは合宿所に戻らないの?」
優しく尋ねる彼はお兄さん気質という感じがした。
雰囲気的に年上かな…?
『あ…いや、なんかさっきのシュートに見取れちゃって…』
これまた近くで見ると綺麗な顔立ちをした人で、今度は思わずそちらに見取れちゃいそう…。
「ああ!!さっきの見てたんだ。」
『はい!!流れ星みたいな綺麗なシュートで思わず…』
さっきのシュートを思いだし、少し感動気味に答える。
「なんだかそう言って貰えると嬉しいよ。えっと、キミは確か新マネージャーの…」
『雷門中2年の高嶺 花ですっ。』
相手が自分の名前を言う前に慌て気味に名前を言う。
「オレは基山ヒロト。ヒロトで良いよ。因みに同学年だし敬語じゃなくても大丈夫だから。」
『なーんだ…大人びてるからてっきり年上かと…』
でもやはり雰囲気は"頼れるお兄さん"って感じがする。
「はははっ。あ、それからさ、オレも高嶺さんのこと、名前で呼んでいいかな?」
『うん!!あたしも花で良いよ。』
「ありがとう。じゃあ、早速だけど花。少しお願いがあるんだけど。」
『えっ、なあに?』
いきなりの彼のお願いごとにあまり見当がつかず首を傾げる。
「あのさ、時間があればちょっと付き合ってくれないかな?自主練。」
『あたしでよければっ!!』
選手の力になれるなら、それほど嬉しいことはないと思う。
快く了承する。
「じゃあ、その辺りからパス出しお願い。」
『了解!!いくよーヒロトっ!!』
「オッケー、花!!」
ヒロトに向かってボールを蹴り出す。
なんだか呼び捨てって仲良くなれた感じがしてちょっとくすぐったいけど嬉しかった。
その後もあたしは夢中でヒロトの練習をずっと見ていた。
あのシュートも、ヒロトのフォームにもスゴく魅せられたから。
気が付けばもう辺りは薄暗くなり始めていて、空には星が瞬き始めている。
「暗くなってきたね。そろそろ合宿所に戻ろうか。」
『うん。夕食の時間に遅れちゃうしね。』
「じゃ、行こうか花。」
ヒロトと肩を並べて合宿所へと歩き出す。
ふと見上げた空には薄く一筋の光が弧を描いていた。