青春応援歌〜オルタナティブエンズ〜
□3球目
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「では、今日も張り切っていきましょーうっ!!」
春奈ちゃんの元気な掛け声と共に練習が始まった。
青空の元でグラウンドに響くボールの音が気持ちいい。
その間にあたしはマネージャーの仕事を秋ちゃんから一通り教えてもらう。
「…とりあえずはこのくらいかな。あとは、ジャージ畳んであげたりタオル手渡したり。それから、練習メニュー記入もしたりねっ。」
『んっ!!大体の仕事はわかったっ!!色々説明ありがとうね、秋ちゃんっ』
大体の仕事を教えてもらい、秋ちゃんにお礼を言ったところでピーッとホイッスルが鳴る。
「皆さん!!休憩時間ですーっ!!」
春奈ちゃんが声を張り上げて選手に向かって叫ぶ。
「はい、花ちゃん。マネージャー初仕事よっ!!」
秋ちゃんはそう言うと、あたしにタオルを数枚手渡す。
「マネージャーの仕事の一つ、タオル配り!!!タオルを持っていない選手に渡してあげて!!」
『はーい!!…なんかちょっと緊張。』
雷門中以外の選手もいるから少しだけ緊張していると、
「ねえ、タオルもらっていいかな?」
声のする方を向くと、髪が外にくるっとハネた、優しそうな雰囲気の男の子がニコッと微笑んでいた。
『あっ…はい!!…どーぞっ』
慌ててタオルを手渡す。
「ありがとう。ボクは、白恋中2年の吹雪士郎。これからよろしくね、花ちゃん。」
そう言ってまた彼は柔らかい微笑みを見せる。
『あ、こちらこそっ!!…てかあたしの名前…』
「…もしかして、名前で呼ばれるの嫌だった?」
そう言う彼の表情は少し困り顔である。
『え、いやいや全然っ!!あたしの名前覚えてもらって寧ろ嬉しいなって…』
慌てて否定する。
初めての人に名前覚えてもらえるのって何気ないけどすごく嬉しいモノだから。
「そっか!!ならよかったよ♪」
ニコニコ笑う彼はとても女の子にモテるんだろうなーっていう感じ。
世間でいうイケメンだと思う。
だから、ちょっと顔を見て話すのが恥ずかしくなる。
…そんでもって、さっきからその整った顔でじーっとあたしの顔を見てるんですが。
『な…なんでしょう吹雪くん…』
「あ、やっと呼んでくれた!!」
彼はたいそう満足気な表情をする。
てか、さっき見つめられたおかげで顔が熱いんですけど…。
「あ!!でもね、ボクも花ちゃん名前で呼んでるから、ボクのことも名前で呼んでねっ♪」
…と彼が言ったその時、
「おーいっ!!吹雪ぃ〜っ!!!!」
見れば、守がサッカーゴール近くで手をブンブン振って彼を呼んでいる。
「…あ、キャプテンが呼んでるや。じゃあ、また後でね、花ちゃん!!」
『うん。行ってらっしゃい、士郎くんっ』
そして彼が背を向けて走り出そうとした時。
くるっとあたしの方を向いたかと思うと、
「…あとさ、花ちゃんってすごいキレイな顔してるね!!」
『は…はいっ!?!?』
「さっき素直にそう思っただけだよ!!」
そうして彼はそのまま守の方へとパタパタ走っていった。
さっきって…顔じーっと見られてた時…?
てか、キ…キレイって…面と向かって普通に言ったよ…!!
顔がまたみるみる真っ赤になるのが自分でもわかる。
もしかして、士郎くんて天然タラシ…?
初めてお話した吹雪士郎くんは、なんだかすごい人でした…。