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□ふもとの薬爺
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「…なんなわけさ、名前も名乗って行かないで!…や、私も名乗ってないか。」
私はさっき、めっためたにのした山賊さん達をひとかたまりにすると、近くの大木にロープでくくりつけてやって来た。
…そのついでに、その山賊さん達が持っていたお宝。
そいつをちょっとばかし頂いたりしたが、それは迷惑賃なので良しとする。
「…どーしよ、この地図…」
…さっき取った…もとい頂いたお宝の中に、さっきの男が探していたシークレット・ソードの手掛かりになるであろう地図があったのだ。
…私は別にそれに興味があるわけではないが、まあ…あって損はせんだろうと思い、拝借しておいた。
「…まあ義理はないけど、探してるってんならあげたらいっか。どうせ方向同じだしね。」
私はひとりごちると、またこの真っ暗でツタだらけのうざったい道を進んでった。
「…うぃ〜っ、着いた着いた!」
丸二日。ナタカーシュの森に入って、丸二日でふもとの村に来た。近かったね、案外。もっとかかるとかは思ってなかったけどね。
「…さて、取り敢えずご飯食べよ。」
着いて早々に、私は村のメシ屋に駆け寄った。
「…おばちゃ〜ん!ミックスとモーニング…って、あぁぁああっ!!!!」
「…よぉ。」
ちいさく。限りなくちいさく、男は手を上げた。
「この間ぶりだな、お前さんもここに用があったのか?」
「や、あんたに渡すモノがあったからさっ!はいっ!」
私は、黒い包みに入った地図を男に手渡すと、向かいの席に腰を下ろした。
「…これは?」
男は、包みをくるくると回しながら私に問いかけた。
「…シークレット・ソードへの手掛かり。さっきの山賊からぶんどっ…頂いたお宝の中にあったから、あんたに渡そうかと思ってね。
目的地同じだったから、追いつけれればいいなあ…と思ってたんだけど、こんなに早く会えるとは思わなかったよ!」
男は「…ふーん。」と、小さく返事をして包みを開けた。
私はその隣で、注文していたミックスジュースとモーニングのサンドウィッチを食べ始める。
「…なっ、これは…」
「んー?なんか解ったのー?」
「……やはり、間違いない!」
がたんっ!と男は席を立つ。
「礼を言おう、お前さんのおかげでまた一歩近付いた!」
「……はあ。」
そのまま私の手を取ってぶん回す。
「…そうだ!お前さん、この村に何か用事でもあるんだろう?俺が護衛してやるよ。いつもなら金を取るところだが、今回は礼を込めて、タダでどうだ?」
さっきまでのツンケンした態度を解いて、人懐っこく聞いて来た。
…さっきと言い今といい…、本当に男なのかな…もしかしたら私より弱いんじゃないの?
でもでも…せっかくタダでって言ってくれてるわけだし。
なんか断っても悪いし…まあ、道中の話相手…と言う名目で、お願いするか。
私はにこりと笑う彼に一言。
「…じゃあ、よろしく。」