おはなし
□テスト
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深夜二時。彼女の寝顔を見ながら、僕はタバコに火をつける。彼女は大口を開けながら眠っていて、非常に可愛げがなかった。それで僕はちょっと彼女に、悪戯をしてやりたくなった。彼女の口の中に、微量のシャブを放り込んでやったのだ。すると彼女はむにゃむにゃと口を動かして、怪訝そうに眉を動かした。
「なにこれ…変な味」
彼女は体を起こすと、僕の方を睨みつけた。僕はなに食わぬ顔で、タバコの煙を口から吐く。彼女は猫みたいに舌なめずりをしながら、首を傾げている。
「今何か私の口の中に入れたでしょう」
「魔法の薬だよ」
僕はしれっとそう言うと、彼女の肩に手を回した。彼女の肩はピクンと揺れてそれが何とも新鮮だ。ピンク色の小さな唇を手で触れると、そっと撫でる。すると彼女は長い睫毛を震わせる。
僕はふいに、窓の外を見た。月がまん丸く光っていて、とても綺麗だったからだ。僕は、その月を捕まえようとして窓の外に足を踏み出した。
「どこに行くの」
彼女のうろたえた声が、僕の背後に響く。しかし僕はもう自分の欲望をとめることができなくて、月の方に向かって外に飛び出した。
「僕は綺麗なものが好きなんだ」
僕はそう呟くと、二度と彼女の元には帰らなかった。何故なら僕は、彼女の唇に付着していた青海苔に幻滅したからだ。彼女には悪いけど、青海苔のついた唇にキスをする気は起こらなかった。
20141013