おはなし

□テスト
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朝起きて、すぐに頭痛。頭を押さえながら夏子は、両足をこすり合わせる。起きたくないけど、起きなくてはならない。出来ればベットにかじりついていたいけれど、そういう訳にはいかない。怠け者にはなりたくなかった。けれど夏子の現状は、怠け者と変わりなかった。

夏子は何もしていなかった。いわゆるニートと言うもので、働くことも学校に通うこともしていなかった。ただ毎日を無為に過ごし、一日の大半をぼーっとしていた。馬鹿のようにも見えるし、或いは鬱病の類いに見えるかもしれない。夏子的には先のことを考えたり、或いは過去の楽しかったときのことを考えてたりしていた。ときにはわんわんないたりもした。しかし涙は、夏子の傷ついた心を完全には癒してくれなかった。

ーー何かしなくてはならない。夏子はそう考えていた。しかし無気力な気持ちに支配されて、夏子は一歩も歩くことができなかった。

夏子はふいに、三年前に死んだ父親の仏壇の前に立って、手を合わせた。とたんに涙。夏子は霞みつつある視界の中で父の写真をじっと見つめた。父は笑っていた。父の笑顔をみていると、荒んだ気持ちが少しだけ楽になった。夏子はそうすることで、自分を慰めていた。父に助けを求めても仕方が無いことはわかっていたが、そうしないわけにはいかなかった。

ーー現実を、見なくてはならない。しかしそれをするには、どうやら時間を欲するようだ。今はただ、父の面影を抱きながら、時間をとめてしまいたかった。進化も退化もない、止まった時間に身を委ねていたかった。

仏壇から立ち去る前、夏子は再び父の顔を見た。写真の中の父は、何だか困った顔をしているように見えた。


20140902

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