おはなし

□テスト
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雲と雲が重なり合って、どんよりと辺りは暗いけれど、優子の気持ちは明るかった。今日は気分がいい。天気が悪いと、何故か心が晴れやかになるのだ。陰鬱な天気は、優子の気持ちを代弁してくれた。雨がふれば、もっといいだろう。

大好きな珈琲を口にしながら、優子は頭を空っぽにした。無論、本当に空っぽにできたわけではない。本当はさまざまな心配ごとで、どうにかなりそうだったが、今この瞬間だけは、なにも考えたくなかった。こめかみの辺りを痛くさせながら、優子は祈りたくなった。祈って悩みが消えるなら喜んで祈りたかった。

ふいに優子は安定剤を飲みたくなった。しかし安定剤は、悩みを消してくれるアイテムではなく、ただ紛らわせるだけにすぎないことを優子は知ってたので、彼女は薬を飲まなかった。

苦しい。そう言える相手がいれば、どんなに楽か。優子は孤独に打ちひしがれていたけど、天気が悪いうちは、彼女の胸のうちは明るかった。この天気がずっと続けばーー。

しかしそんな馬鹿な願いは叶うはずもなく、雲は次第に姿を消して、太陽がひょっこりと顔を見せた。優子の頭は次第に頭痛がし、身体を起こしていることがままならなくなった。マグカップをテーブルに置き、ベットによこになろうと身体を動かした。するとふいに目眩がして、その場に倒れこんでしまった。優子は床の木目を数えながら、目眩が終わるのをただただ待った。それは永遠に終わることのない、恐ろしい時間だった。身体を震わせながらしだいに、優子の視界はぼやけていった。

もうすぐ夏が終わって、秋が来る。ひぐらしのなく声が、嫌になるくらい辺りに響いていた。耳を塞ぎたくなるくらい、それはそれは悲しい声だった。

20140901

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