混合
□光を失う大空
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浦原side
「いや〜久しぶりに来ましたね〜、並盛町」
アタシは今、贔屓にさせてもらっている方のご自宅に商品を運んでいる途中ッス。
「店長。遊びに来たわけじゃ」
「わかってますって。別の買い出しを頼んでる雨とジン太のお土産買ってサッサと帰りましょ〜」
すると何かを殴る音と、うめき声が近くの路地裏から聞こえてきた。
「店長」
「ええ。見てみますか」
何かと思い気配を消して覗いてみると明らかに不良という感じの人物が一人の少年を殴ったり蹴りつけたりしていた。
最低ですね……。
だからアタシはわざと不良を挑発するような声でストップをかける。
「おや〜。一人を大人数で囲むなんて酷いっすね〜。お巡りさん呼んじゃいますよ〜」
アタシの声に気づき不良達はこちらを向いてきた。ま、アタシに一般人が敵うはずなんてないんですけど……。
「なんだ、テメェ」
「やんのか?」
うう〜ん。アタシが出るよりここは。
「テッサイさん。やっちゃってください」
「了解です」
テッサイさんが不良達の前に出ると不良達は気圧され、去って行った。
「大丈夫ですか」
「あ……はい……ありがとう、ございます……」
「どうぞ」
アタシは倒れていたすすき色の髪をした少年に手を差し延べた。けれど少年は手をとることはしなかった。
「大丈夫、です……。一人で、立てます、から」
少年はそういいながら、ゆっくりと立ち上がる。
年齢的には黒崎サンと同じくらいですかね。
「このままあなたの家に戻るとご両親が心配なさるでしょうから、一旦アタシん家に行きましょうか」
「……え?」
「テッサイさん、おぶってさしあげて」
アタシがいうとテッサイさんは軽々と少年をおぶった。
「あ、大丈夫ですから。歩けます。下ろしてください!」
「怪我人に歩かせるわけにはいきませんから」
「本当に大丈夫ですから! 下ろしてください!」
「アタシらはあなたに危害を加えるつもりはありませんよ」
少年の瞳を真剣に見つめると少年は小さくわかりましたと呟き、おとなしくなった。けれど瞳にはまだ恐怖が消えきっておらず、体も微かに震えていた。
おそらく少年は少しだけ対人恐怖症になりかけているんでしょう。アタシらはそのまま少年を店へと連れて帰った。