混合
□光を失う大空
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綱吉side
「ただいま」
俺は殴られた箇所を隠しながらドアを開ける。幸い、最近は長袖を着ているため傷や痣は見えない。顔の傷はどうしたって隠せないけど。いっそのこと前髪でも伸ばそうか。
「おかえりなさい、ツー君。なっ、どうしたのその傷!」
「ちょっ、ちょっと階段から落ちゃってさ……」
「本当に?」
母さんが心配そうに顔を覗き込むが、俺は「本当だよ」と笑いかける。こんな嘘ばかりが上手くなる自分が嫌になる。
いや、むしろもうこんな事になってから、母さん達に嘘を突き通し始めてから自分自身が嫌いだ。大嫌いだ。
「一応リボーン君に連絡する?」
「い、いいっ! リボーンには黙ってて! お願いだからさ……っ」
母さんのリボーンに知らせるという言葉に過剰に反応してしまった。
今まで信じたいた仲間に裏切られたんだ。もしリボーンまでもがって考えると体が震えてくる。
「わかったわ。リボーン君には黙ってる」
「ありがとう。母さん」
恐怖で微かに震えてしまっているにも関わらず、母さんは苦笑いを浮かべながら納得してくれた。
迷惑しか掛けていないことに申し訳ないけれど、ありがたくもあった。
俺はそのまま部屋に上がる。家の中では少しだけ笑うことが出来る。でも外ではあまり出来なくなった。むしろ、外ではどうやって笑っていたのか思い出せない。
部屋に入りベッドに俯せに倒れ込む。
どうしてこんなことになっちゃったんだろう。そんな事ばかりが頭を過ぎる。
いつもならいるリボーンはイタリアに仕事で帰っている。いつ帰れるかわからないって言っていた。ただなるべく早く終わらせて帰るとも言っていた。だから今の俺の心を支えていてくれてるのは母さんと。
「ガハハハハ! ツナー! オレっちと遊ぶじょー!」
「ダメ、ランボ!」
ランボとイーピン、そして。
「ツナ兄、お帰り!」
フゥ太。この3人が無邪気に笑いかけ、話しかけてくれるおかげで何とか俺は自分を見失わずにいられる。
3人を向かえるのに、俺は体を起こし、ベッドに座った。するとそれを待っていたのかのようにランボが勢いよく飛びついてきた。
「……っ!」
飛びついてきたのが傷にひびいて、顔を歪める。
「ツナ兄、またケガしてるの?」
「だ、大丈夫だよ」
「ツナさん、ダイジョウブ?」
「大丈夫、二人ともありがとう」
心配してくれた二人の頭をなでた。二人とも気持ち良さそうに目を細めた。
「オレ着替えるから、出て待っててくれる? 後でちゃんと遊ぶから」
「ツナ、本当か? 痛いなら別に……」
ランボが下から顔を心配そうに見上げてくるが俺は頭を優しく撫でる。
「別に大丈夫だよ。ありがとうランボ。ほら遊んでやるから今はちょっと出てて。着替えたら呼ぶから」
「わかった」
俺の言葉に3人はおとなしく部屋から出てくれた。
きっとフゥ太は気づき始めてる。ランボもイーピンもきっと……。
本当にどうしてこんな事に……。