導きの光
□prologue
1ページ/6ページ
そこは、広い廃墟だった。
ほんの数時間前まで人々の笑顔と活気で溢れていた小さな町。
何があったのか、町の賑わいも今では見る影もなく、血と瓦礫だけが月明かりに照らされ、不気味な様相を浮かべるのみ。
そんな町の中心に佇む、一人の幼い少女がいた。
「お父さん、お母さん……どこにいるの?」
切れて血が滲んだ唇から発せられる、か細い声。
身体のあちこちが傷だらけで服もボロボロの少女は、痛む足を引き摺りながら廃墟と化した町を彷徨う。
どこを見渡しても、町の残骸と血の海だけが広がっている。
穴の空いた服は見つかっても、肝心の持ち主の身体の代わりに、砂の山だけが残されている。
生存者は、自分一人だけ。
残酷な現実を突き付けられた少女は、その場に膝から崩れ落ち、両手で顔を覆った。
「ごめんなさい…、ごめんなさい……っ」
嗚咽に混じり、聞こえてくる謝罪の言葉。
誰に向けた、何に対する謝罪なのか。
その意味を知る者は、少女以外誰もいない―――…。