L.S

□君の為になら、僕は
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ディスプレイの光る携帯を持ってきて
それを耳に軽く当てる馨

“誰からか”なんて
とっくにわかってるみたいに



「…輝さん??」


「……うん、」



その寂しそうな、切なそうな辛そうな顔を



僕はただ、見ていた



君の為になら、僕は








「「おはよーヒメ達ー」」


何もなかった様に
何も起きていなかったかの様に

僕等は次の日からまた肩を並べて登校した



「まあっ、お二人とも仲直りを??」


「良かったですわ、またお二人でお相手していただけますのねっ」



勿論周りは過剰に反応。
まあ僕らのクラスの奴なんか一段と驚いてた。

僕らの喧嘩…というか言い合いを間近で見ていた訳だしね


だから当然、集まってくる奴等もいっぱい居た




「常陸院君、仲直りしたんだね」

「一時はどうなる事かと思ったよ」



触れては離れ
触れては離れ

笑いかけては離れていく奴等

僕はそんなのなんて事ない、けど

いい加減、馨の作り笑いも見たくなくて



「……馨、」

「ん、なに…?」



両手で頬を包めば
馨は一瞬体をこわばらせて
首を傾げた


…そんな可愛い顔してもお兄ちゃんはもう騙されてあげるつもりないけどね!




───ガツンッ



「いっ!!!!たぁ…っ!!何すんのひか…───」


「僕の言った事、覚えてるよね??」




───しつこいくらいに受け入れようとしてくる奴しかいないんだ




「………馨?無理して笑うな、嫌でも周りは僕らを受け入れてくれるから。な??」



ぶつけた額同士が、痛い。
じんじんしてるしヒリヒリもする


でも馨は嬉しそうに笑ってて
それを作り笑いだなんて思えなくて



「…うん、わかってるよ光」




頷いた馨の頬を包んだまま
僕らは額を合わせて微笑んだ















でも、問題は。




















───…輝さん??


───………うん







「それではテキストを開いてください、今日は28ページから……」



馨が、する、あの顔

僕がこの間言った様な

作り笑いしてる顔とか
無理してる顔とか
そんな類の顔じゃなくて






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