L.S
□きっと、まだ
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その晩、馨はそのまま家に帰ってこなかった
僕はただ馨を心配して
何度も何度も、電話をかけた
何回目かのコールの後
一瞬あっちの声が聞こえたと思った瞬間
通話は途切れて
僕はそのまま足を抱えた
小さな小さな声が何かを僕に訴えてた、
そんな予感を、胸に残したまま
────『……めて…っ!』
馨、お前は今、どこにいる?
きっと、まだ
馨の顔を見ないまま、僕は夜を明かした
勿論心配だし今も探しに行きたいくらい。
部活休むくらいどうってことないんだけど…昨日は馨の事が心配で部活無断欠席したし
……なにより鏡夜センパイの目が怖いし。まじで怖いし。
だから僕はこうして一人で接客をしているワケで。
「まあ!じゃあお二人が喧嘩なさったと言うのは噂ではなかったのですね??」
「私もそのお噂耳にしましたわ!大丈夫ですの?光君」
「うん!今はこーして姫達といるし、ダイジョーブダイジョーブ。どうせすぐ仲直りするけどーそれまでは寂しいからヒメ達に相手してもらいたいなあ…?」
「ええ、喜んで!!」
嘘嘘。ほんとは今すぐにでも馨を探しにいきたいんだけどね。
悪いけどヒメ達より馨の方が断然大事!
やっと見付けた僕の弟だし、大事にしてあげなきゃいけなかったんだ。
───馨は…中学までの僕だ
───まだ狭い箱の中なんだね
あんな言い方しなきゃ良かった。
僕の悪い癖、思ったらすぐ言葉にする。
それが悪い事であれ良い事であれ考えるよりも早く口が出る。
もう少し馨を気遣いながら言うべきだったんだ。
今ならただ漠然とそう思う
でも────
────どうしたら居場所が出来るの──…っ!?
なんか、すっきりしない。
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