L.S
□きっと、まだ
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「光、本当に馨と喧嘩したのか??」
部活後。ハニー先輩とモリ先輩、ハルヒが帰ったあとの準備室で、鏡夜先輩がストレートに聞いてきた。
さっきのヒメ達との会話聞こえてたのかな…
まあどっちでもいいけど
僕が悪いなら『悪い』って言ってもらって馨になんとか謝ろ。
先輩に言われたら謝る気になるかもだし。
「ん、ホントホント」
「ほっ…本当なのか光??駄目だぞー暇潰しの兄弟喧嘩などで…」
「本気だよ、本気の喧嘩」
「………そうなのか??珍しいな…お前はともかく馨はそこまで感情的になるタイプだったか…?」
「それはそうと環、お前はさっき帰って行ったんじゃなかったか??」
「うむっ!シマ達に飲ませようと買い貯めしておいたインスタントコーヒーを今日こそは持って帰ろうと思ってな!それを取りに帰ってきたら喧嘩と……ハッ!そうだ光!そんな事よりも何故喧嘩なんかしたんだ??
全く鏡夜ともあろうものが、それを先ず聞くべきだろうが!!」
「お前が入ってこなければもう聞いていた筈だったんだがな??」
うーん…黒いオーラがむんむんしてる
「ところで光、本当に何故喧嘩なんかしたんだ??あんなに馨が来た事を喜んでいたじゃないか」
眼鏡の奥の黒い瞳と、目が合う
その瞳は冷淡だったけど
馨のあのつまらなさそうな瞳に比べたら全然暖かさを持っていた
僕も…あんな目してたのかな
「僕と同じだねって言ったんだ、中学生の頃の僕と。」
「中学の頃の…??」
「うん。少なくとも殿に勧誘受ける前の僕。」
あの頃僕は妙に突っ張って
一人でいてもつまんないけど
愛想笑いしてついてくる奴等とつるむよりよりよっぽど楽しいと思ってた
誰が好きだ嫌いだで騒ぐ女子も唯鬱陶しくて大嫌い
ラブレターもらってはその子呼び出して目の前でやぶったり燃やしたり
そんなんで僕の家がどうなるなんて心配もない
皆反抗できるワケないって思ってたし、事実そうだった
家は裕福だったし不自由なんて何ひとつない
会社だって売れ過ぎてて困るくらい
犠牲も知らずに、そう生きてた
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