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□憎しみの連鎖
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「憎しみは憎しみを生むだけよ。いい?ルイ、人を愛しなさい」


いじめられて帰ってくると、いつも母からそう言われてきた。



ねえ、母さん。
でもね、私は母さんを殺した人間が憎くてたまらないのよ。

いくらその相手が、かつて愛した人であろうとも。




「俺が憎いか?ルイ」


「えぇ、とてつもなくね。愛していたことを忘れるくらいに」


「ならば俺を殺せばいい。憎いのなら殺せ。…お前に憎まれて生きるのは、もう、耐え切れない」



私は頭に血が昇ったのを感じた。頬が熱い。
耐え切れない、だと?



母が元恋人に殺されてちょうど1年。
そう、今日は母の命日だ。そんな日にのこのこやって来て殺せ、だなんて腹立たしくてしょうがない。1日たりとも忘れたことなんかなかった、こいつの顔。
何度も何度も壁を、床を、物を壊した1年だった。



「私の母を殺さなければ良かったんだ」


「嗚呼、そうだな」


彼は私から目を逸らして遠くを見つめていた。


「今更言い訳をするつもりは毛頭ない。しかし、俺はこの1年ルイを忘れた日なんてなかった」



私もよ、クロロ。



どこから取り出したのか、ナイフを私に向かって投げた。それをパシッと受け取る。
刃渡り約20cm。これで心臓をぶすりといけば、無抵抗なクロロは即死だろう。


虚ろな眼で彼を見る。

安堵の眼で私を見る。
やっと楽になれるんだと眼が語っている。



でも、彼を殺したら、私も旅団の皆に憎まれるわね。


ねえ、母さん。
やっぱり憎しみは憎しみしか生まないのね。


ナイフを振り上げた瞬間、母の顔が、あの言葉が、頭の中で反芻した。



振り上げたナイフは地面に落ちた。
涙も地面に落ちていった。



「クロロ、私、あなたが憎くてしょうがない。でもね、でも…あなたを愛してた事実も変わらない。私は…」





できるならば憎しみよりも愛しさでこの世界を満たしたいと思うのです。



end

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