short

□Snowy night to fall.
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寒い。
白い雪がちらちらと降ってきていた。
辺りは暗く、外灯に照らされた雪がピカピカ光る。
それを暫く眺めていると、メールの返信をしようと開いていた携帯の画面が、いつの間にか少し濡れてしまっていた。
早く打とうとするのだが、指がかじかんで思うように操作出来ない。



“あと少しで終わるから”


もうちょっと待って。



彼が約束の時間に遅れるのは稀ではない。
仕事上よくあることだ。
万能である彼にしても、なかなか終わらない仕事もある。



“待ってる”

たったそれだけの言葉を、何度も打ち直し、ようやく送信ボタンを押した。
あまりにも寒いから、自販機で温かい飲み物でも買おうかと思ったが、必要以上に動くのもつらく、近くにあったベンチに腰をおろした。



雪はさっきよりしばしば強くなっていた。
濡れた携帯を服で拭き、鞄の中に閉まった。
彼からの返信はもう来ないから。
もう少ししたら、彼は現れる。
それまで雪を眺めながら、待っていよう。


見るだけじゃつまらないから、空に手を向ける。
そのまま掌に落ちればいいものをまるでわざと私の手を避けるように地面に降りる。
悔しくなった私は、雪を追いかけ、つかんだ。
だが直ぐに溶け、水になった。
私の指先は既に真っ赤だった。


「何してるの?」


あ、と声も出す暇さえなく両手を掴まれた。


「わー、冷たい手。ごめんね?こんな寒い中待たせちゃって」


「雪、捕まえてたの」


シャルに掴まれた手はあたたかくなっていった。
ベンチから立ち上がると同時に、シャルも掴んでいた手を離す。
フリーになった私の手はまた雪を追いかけた。


「手、」

「ん?」


「真っ赤」


雪から目を離して、シャルの方を向いた。
雪と一緒にシャルも照らす街灯。

やっぱシャルはかっこいーなーって思った。


「そんなに雪を掴みたいの?」


「…うん」


再び冷たくなった手を見つめて、シャルの手を握った。


「全然捕まらないわ」


温度が上がる指先。




あなたも雪も。


似てるのよ。だから
捕まえたい。




Snowy night to fall

(雪の降る夜)




end

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