今を生きる私
□シリアスだって作れちゃうんだから
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「はじめまして、クロロ団長!私はタナカルイ。マチとシズクに拾われて約13時間!クロロ達の知らない世界からやってきたよ!」
一息に自己紹介を済ませた私にクロロは一言。
「こいつは一体なんなんだ」
うん、私には言ってないな!
寧ろ見てさえくれない。視線は空気の様に通り抜け、パクを見ている。見えますか、私の姿!ここにいますよ!?
因みにマチとシズクは次の仕事に出かけてしまっている。
マチは私の頭をぽんと撫でて、パクに託した。
「ルイが言ったとおりよ」
「クロロ達の知らない世界からやってきたよ!」
大事なことなので二回言ってみたんです。
そして、ニコニコっと笑ってみるんです。
しかし彼は表情を崩さずこう言ったんです。
「殺せ」
「ブロウクンハート!!!!」
この愛くるしいだろう笑顔を見ても殺せと言うのか!?このいたいけな少女を殺せと言うのか!?このハゲ鬼めがっ!!
クロロのこの凍てつくような目は本当に怖いので心の中だけで罵る。
「クロロ、気持ちはわかるけど聞いてちょうだい。本当のことなのよ」
「本当のことなんですよ、お兄さん」
「お前は黙ってろ。パク、どういうことなんだ」
冷たい、予想通り、団長冷たいよ。もっと溶け込みやすいような人柄かもしれないと考えてたのに、やはり冷たいよ、うっ。
私の渾身のぶりっこも簡単に返される始末。いや、まあ成功したことなんてないんだけどね。
「この子が最初言ったとおりよ。もう少し詳しく説明するわね」
パクが今までのことをわかりやすく話してくれた。
一通り話を聞いたクロロは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに冷静な顔に戻っていた。
「ほう、まあ興味が全くないと言ったら嘘になるが、特別必要でもないな」
ちらりと私を見る。
いやん、目があった。ここにきてやっとクロロと目があったよ、母さん!!!
て、ちょっと待て。特別必要ないだと!?
そこへ、誰かが帰ってきた。
大柄以上に大柄の男と侍、ウボォーギンとノブナガだ。
談笑していた二人が私に気付いた。
「なんだ、この女」
「はじめまして、タナカルイと申します!」
間髪入れず、答えた。
しかし次の瞬間、頭が真っ白になった。
クロロ、パクノダにウボォーギン、ノブナガ。
視界が歪んだ。
漫画の中ではもう会えない、二人。そしてその友。仲間。
今の今まで忘れていた。ここの未来を。知っているのに、忘れていたんだ。
三人が並んでいると、胸が苦しくなった。この気持ちをどう言葉で表わしたら良いのかわからない。
クロロがおいどうした、と警戒しながらも心配する顔を覗かせた。
彼が指揮する姿が浮かんだ。
一層視界が歪む。
パクも心配そうな顔をして、近寄った。だが私は、本能的に飛びのいていた。
今パクに触れられると未来が悟られる。これは知られてはならない未来なのだ。
今の私には、絶対に知らせてはいけないとしか思えなかった。
いきなり飛びのいた私を、皆驚きの目で見ていた。
クロロを除いては。