青春したいの!

□感動的な卒業式
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「ねぇねぇ、シズクちゃん」

「なに?」

「皆泣いてるね」

「お別れだから悲しいんだよ」


たまたま卒業式の席が隣になったシズクちゃん。モタンくんに関してだけじゃなく、意外と趣味が合うことが判明し、そこそこ仲良くなっていた。
シズクちゃんは可愛いけど毒舌だ。天然の毒舌だ。おまけに、どうでもいいことは忘れ思い出すことはない、天然毒舌のキュートな子だと言うことも判明した。


卒業式の練習も、ほとんどシズクちゃんとお喋りをして暇を潰せた。寧ろこんな可愛い友達が出来たことに感謝するくらいだ。



当日、卒業式。

そう、今日は卒業式だった。


皆、泣いていた。
転校してきたばかりで顔も、ましてや名前さえも知らない先輩方が涙を流しているのを、ただ拍手をして見送った。



なんとなく沈んだ気分で教室に戻り、第一声に聞いた言葉がノブナガくんの「くっそ。肩こったー」だ。


どこかの国で流行っていたのだろう、私からしたら変な髪型だと思ってしまうちょんまげがノブナガという名前だと知ったのは昨日だった。



「ノブナガくん、それ卒業生に対して失礼だと思うよ」

「あ?」

「いや、すみません」


ノブナガくんは結構いかつい。
このクラスの男子はほとんどいかついけれども。
シャルは別だけどね。ついでに言うと女子は結構レベルが高い。まだシズクちゃんとしか話したことないが、見る限り美少女だらけなのだこのクラス。
転校初日フィンが私を見て萎えたのも、今じゃ頷ける。

その話は別として、ノブナガくんは髪をおろすとかなりダンディーだ。これで高校生とか詐欺だと言っても過言ではないくらいダンディーだ。

それも、ノブナガくんの名前と同時に知った。


昨日の午後は卒業式の準備をしていた。ジャージに着替えた私たちのクラスは卒業生のイスの準備を担当した。その中で、私がパイプ椅子を両手にいっぱいいっぱい運んでいるところを助けてくれたのがノブナガくんだった。

もちろん最初は誰なのか全くわからなかった。その時髪を下ろしていたからだ。
後でシズクちゃんに聞いてみると、いつもはちょんまげをしているノブナガくんのことだとわかった。髪を下ろすだけであんなに印象が変わるものなのか。いや、ちょんまげからロン毛になったんだ。そりゃ印象もガラッと変わるに決まっているよね。



「なんでちょんまげしてるの?だから肩こるんじゃない?」

「は!?」

私はノブナガくんを見て言ったのに、隣でフィンがへんちくりんな声を発した。

「私はノブナガくんに言ったの。フィンは黙ってよ」

「ふざけんなよ。ノブナガも俺と同じ気持ちだろうよ」

「はあー?さっきの“は!?”の一言にどんな気持ちが宿ってるって言うの?」

「驚きしかねぇよ、あほ」

「がっはっは、まあまあお二人さん。ちょんまげだろ?かっこいいからに決まってんだろ」

「まじかよ」

「一瞬にして萎えるお前がすげぇよ」

「ありがとう」

「褒めてねぇし」

「てか私、思うんだよね」


手に顎を乗せて遠くを見つめてみる。
あ、これ行きすぎるとしゃくれそう。


「今日の卒業式みたいに私も卒業したい」


「すれば?」


フィンとノブナガ、いつから聞いていたのかシズクちゃんまでもが声を揃えて言った。


「いや、あのね〜、このクラスであんな卒業式迎えられますか?うん、到底無理だね!」


「お前こそ失礼すぎるだろ、俺らに対して」


「シズクちゃんとか、女子はいいんだけどね〜」

目の保養になるし。


「あ、クラス替えあるから心配しなくていっか!」


「ないよ、クラス替えなんか」


「え!?」


「思いついたところ悪いけど、クラス替えないし、教習も変わらないよ」


「え!?」


クラス替えがない、だと…?
おまけに教習そのまま!?
思わず顎が手から滑り出しそうになったよ。


「かっかっか、残念だったなあ!」


「自業自得ね」


「フェイタンさん聞いてたんですか」


てか、言葉の使い方間違ってると思うんですけど。


「まあ、あと1年よろしくなあ」

おかしそうに手を差し出すフィンにチョップをお見舞いしてやった。



ああ、素晴らしい卒業式を迎えたい。なんであと1年早く生まれなかったんだ、私。

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