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□クリスマスと言う名に便乗して
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街はクリスマス一色だった。しかし、家に帰るとその雰囲気は一変する。いつもどおりの、何の変哲もない部屋の中。まるで隔離されているようだ。
「シャル、クリスマスプレゼント買い忘れた」
私が平然とそう言うと、彼は口調に少し感情をつけて
「うわ、俺ちゃんと用意したのに。最悪」
と言った。
「そこまで言わなくていいじゃーん。じゃあ、今日の仕事で宝石盗ってくるから、それをあげるよ」
「えー、イラナイ」
「なんか矛盾してるんだけど」
「してないよ。プレゼント内容に不服なの。大体じゃあってなんなのさ、適当過ぎ」
「まあ、先に中身バラしちゃったら楽しくないよね。よし、じゃあシャルが用意したプレゼント、何なのか教えてよ」
「何ソレ、意味わかんないんだけど。てかルイが言ってることこそが矛盾してるから」
「あー、失言。前言撤回ね。それに見合ったプレゼントを用意するって意味」
「うわ、もっと最悪」
「なんでよ、理にかなってるでしょ」
「やだ、そんなプレゼント嫌だ」
「ならあげないよ、めんどくさい」
ぷいっと顔を背けてみた。
「もう、だから他の男とは直ぐに別れちゃうんだなー」
横目で彼を見ると、呆れ顔のシャルがいた。少し上を向いている彼は、どことなくつまらなさそうだ。
「別に。シャルは私と別れないでしょ?だからこんな最低なこと、言ってるの」
「うーん、嬉しいような」
「シャルが言葉濁すなんて珍しい」
顔を下に向け、考えている。その難しい表情のまま私を見つめた。
不覚にもかっこいいと思ってしまった自分が悔しい。
「さっきの言葉で十分って言いたいけど、俺もそんな人間出来てないんだよねー」
語尾をねーと伸ばすと、いつも笑っているシャル。私も満面の笑みでこたえた。
「そっか、なら私がプレゼントよ、なんて言葉出てこないからね」
「わかってるよ、ルイの身体は本物のプレゼントのオプションみたいなものなんだから」
「うわ、その言葉も喜んでいいものか悩みどころね」
彼の笑顔とは対称的にしかめてしまう。
「はは、いいよ、喜んで。俺はちゃんとプレゼント用意してるんだから」
ちゅっと頬にキスされた。
「まさかこれがプレゼントとか言わないわよね?」
「俺がそんな男だと思ってんの?」
「ふふ、冗談よ。あ、そろそろ仕事に行かなくちゃ。帰りは、0時過ぎるわ」
なーんだ、と言った彼は楽しくなさそう。まあ、クリスマスイブを恋人と過ごせないのは辛いわね。団長も最近彼女と別れたからって、イブに片方だけ仕事入れるなんて酷だと思わない?
「サンタさん、来れないね」
「平気よ、私のサンタは朝でも来てくれるから」
微笑んでシャルの頬にキスをした。
するとシャルは可愛く笑った。
「はいはい、困ったコドモだね」
「じゃ、行ってくるわ」
クリスマスと言う名に便乗して
(ただいま、シャル。はい、プレゼント)(え?まじ?宝石じゃないし。あ、でもこれすっごく欲しかったやつ)(じゃあサンタさん、私にもプレゼントちょうだいな)(まだダメ。先にオプションちょうだい)
end