短編の章
□甘酒がおいしい季節になりました
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―――――木枯らしが吹く、寒い季節。そう、もう季節は冬で、もういつ雪が降っても可笑しくない状況だ。
そんな冬道を、一人の男子高校生が歩いていた。
大きなカバンを引っ提げ、星柄のマフラーを棚引かせながら、ブルブルと肩を震わせている。
「うぅー、寒…!」
彼は「風間千景」。名門「白縫学園」の高等部に通う少年だ。そんな彼は、この寒い日に一人で道を歩いていた。
「まったく…。沖田も斎藤も、何で先に帰っちゃうんだ…!原田も補習だし、土方は生徒会だし…。結局ヒマなの俺だけかよ…!」
―――まったく一人で寒い思いをするのは限界だ。一緒に帰ってくれない友人達の事を思うと、風間は少し苛立ちを覚えた。
「ああぁ、畜生!!」
風間はイラッとして、落ち葉を足で蹴り上げた。するとその中から―――
「あ…、栗だ」
一つのイガグリを見つけた。風間は栗を近くで見ようと屈みこむ。
「食えるのか…?」風間がそう手を伸ばした時、イガの中から小さなイモ虫が、にゅっと顔を出した。
「うわ…ッ!」風間は、ビックリして声をあげる。しばらくイモ虫を眺めていた風間は、急に心がぽっかりと寂しくなった。
「そうか…。お前も一人なんだ。寂しいな…それと、寒いよな…」
風間は、小さくクシャミをした。