小説もどき
□宮地センパイ目線
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出会ったのは一週間前---。
部活帰りの電車の中だった。
いつも通り曲を聴きながら、
いつも通り携帯でブログ回りをしてた。
いつも通りの日常だった。
たまたま偶然。
本当に偶然。
空いてる車内で一際目立つ---
お前を見つけた。
着てる制服からして海常の生徒らしい。
毅然としてるが少しあどけなさを残していて、見た感じは年下のよう。
確かに周りの友達っぽい奴らもレベルが高かった。
その中でも纏う空気が違うっつうか、ずば抜けて輝いていて…
まさしく容姿端麗という単語がふさわしい。
むしろ足りないくらいで。
道を歩けばだいたいの男は振り返る。
そんな奴。
その声。
そのスタイル。
その仕草。
その---
---顔。
どストレートにモロタイプで---。
友達に見せるふとした笑顔がたまらなく眩しくて、
つい見とれてしまっていた。
いやいや、
別にストーカーとかじゃねえから。
勘違いすんなよ?
女からすれば少し背が高いけど、
191pの俺からするとちょうどいい感じ。
…ちょうどいいは失礼か。
とにかく遠くから見てるだけでも十分いいレベル。
でもやっぱ帰り道で何回か同じ車両で会う
度に
名前とか誕生日とか好きな食べ物とか…
彼氏
とか
いんのかな…?
なんて些細な事が気になって気になって仕方なくて。
あの笑顔を独り占めしたい…とか。
隣に置いてみたい…とか。
どんどん欲張りになっていく自分がいて…。
どんな感触なんだろう…。
触ってみたい。
抱きしめてみたい。
なんか知らねぇけどいつの間にか目で追ってるし。
探してる。
頭ん中モヤモヤしてなんかよくわかんねー。
なんでそこまで知りたいんだ?
高尾じゃあるまいし、ダッセェけど話しかけるなんて勇気俺には無い。
ああゆうのって高嶺の花っつうのかな…。
俺なんかじゃ釣り合わねーか、なんて否定的に考えちまったり…。
でもやっぱ---
---気になるんだよな---
つか、何かで見たことあるような…
…思い出せね…。
そんな感じでいくつかの駅を過ぎ、
お前が電車から降りようとしたとき---
「おい」
何故か俺は無意識に腕を掴んでしまった。
何やってんだ俺…。
自分のした行為に軽くテンパる。
当たり前だけど返ってくる台詞。
「なんですか?」
目の前で聴いたその声は本当に俺好みで。
間近
で見たその顔はホントかわいくて。
すげー美人で。
改めてストライクかかって。
でも、向こうからしたら俺は見ず知らずの他人な訳で。
いきなり知らねぇ男に腕なんか掴まれたら誰だってビビるよな…。
が、
違った。
じっ、とこっちを力強い眼差しで見据えてきて…
思ったよりも強いやつらしい。
そんな目でまじまじと見られたらこっちが目を逸らしたくなる。
見た目が見た目なだけあるからナンパ慣れしてんのか?
それにしても解る事は一つ---
明らかに警戒されてる。
腕を掴んだのはとっさの反応であって…
意味なんか無いからどうすればいいんだか…。
「悪ぃ なんでもない」
とりあえず放すことにした。
お前は何も言わず友達とそのまま人混みに消えていく。
普通だったら文句言うよな…?
何も言わねぇってことはやっぱり怖がってたのか…?
そりゃそうだよな…いきなりデカイ男に掴まれちゃあな…。
っつーことは強がり…?
やべぇ、完璧惚れた。
ああ……
名前…聞いとけばよかったかな…。
少し後悔…。
あと…腕…細かったな…。
どっかの変人な後輩みてーな考えだけど…
運命って…
本当にあんのかな…。
その時、
俺はもっと早くに気付いてないといけないハズの事に気付いた。
ああっ!!
降りる駅乗り過ごしてる!!
後に変な成り行きでお前の事をイヤでも知ることになる。
神のヤツを恨んでやる。
轢くぞコノヤロー。