小説もどき
□カゲロウデイズ 紫原目線
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8月15日 午後12時半くらいの話。
その日は天気が良かった。
病気になりそうなぐらいに眩しく太陽は日が射していた。
正直暑すぎ。
なんつーの?猛暑ってやつ?
マジ最悪だわ。
家にいてもヒマだからとりあえずコンビニまでアイスを買いにいった帰り道、公園でひときわ目立つ君を見つけた。
そんでヒマ潰しにしゃべってた。
どーでもいい話を延々と。
アイス食べながら。
「俺、夏って嫌いなんだよね」
「へー…」
「…つか、なにその猫」
君はベンチで膝に猫を乗せ、撫でていた。
「野良猫。なんかだいぶ人なつっこくてさ…ほら、かわいいっしょ?」
君が猫を持ち上げ俺に見せてきた。
「ニャー…ってか?」
君が猫の鳴き声を真似したあとに
猫はニャーと一鳴き。
まあ、君に片想いの俺から言わせてみれば君の方がよっぽどかわいいんだけど。
あえて言わない。
むしろ言うバカがどこにいるって言うの?
……黄瀬ちん辺りは言いそうだけど。
「でもまあ…私も夏は嫌いかな…」
また膝の上に猫を置き、撫でながら君は言った。
「暑いしね」
「暑いもんね」
意見が見事に一致。
暑がりだと予測。
「夏生まれだけどw」
君は皮肉混じりに少し笑いながら言った。
そんなどーでもいい会話だけど俺は君と一緒にいるというだけで楽しかった。
その時、君の膝にいた猫は立ち上がり、膝から飛び降りて真っ直ぐ走り出す。
簡単に言うと逃げ出した。
まあ、猫だもんね。
気まぐれな生き物だからさっきまで喉鳴らして甘えてたと思ったらいきなりそっぽ向いて逃げ出す事だってある。
「あ、待って」
と、
君が猫を追いかける。
逃げた猫を追いかけるとか子供みたいでかわいいな。
子供とか人の事言えないけど。
猫は車道に飛び出した。
あーあ、完璧に逃げられちゃった。
でも君はまだ追いかける。
車道に出る。
猫以外は見えていない様子。
その時信号機は強い日射しの中、赤く輝いていた。
あ、
ヤバい。
俺が思った時にはもう遅かった。
バッとトラックが走って来て---
君の体を引きずって凄い音が辺りに鳴り響く。
ガリガリと。
轢かれた。
トラックに。
俺は君の元へ急いで走る。
そこには---
---変わり果てた君の姿が。
「………っ!?」
言葉に鳴らない叫び。
悲惨な光景。
君の血に染まる視界。
中身が出てる。
骨なんかぐしゃぐしゃ。
体の震えが止まらない。
止まれ。
止まれ。
止まれ。
唖然。
呆然。
トラックの運転手が真っ青な顔して降りてくる。
その時、何故か俺は君の体を抱えていた。
服に血が着こうとお構い無し。
もう無我夢中。
君の体がだんだんと冷えていく。
温めようと思った。
こんなクソ暑いのに君の体は冷えていく。
ふと、俺は自分の両手を見てみる。
血塗れだ。
頭が真っ白。
通行人の甲高い悲鳴が俺の耳を貫く。
うるさいな。
なんて言いたかったけどそんなの言う暇は無い。
人が集まってくる。
救急車なんて叫ぶ声もする。
俺のバカな脳ミソでも理解できた。
救急車なんかもう…手遅れだ…。
ああ、わかった。
これは夢だ。
嘘なんだ。
これは夢だ。
これは嘘だ。
これは夢だ。
これは嘘だ。
これは夢だ。
これは嘘だ。
これは夢だ。
じゃあ---
俺の膝に感じている
この子の重さは夢なの…?
この生々しい感覚。
血の臭い。
血飛沫の色。
周りに群がる人たち。
広く真っ青な空とは対照的に真っ赤な血が広がる道路。
夢なわけない。
で
も何故か涙は出ない。
受け止めたくない事実とは裏腹に冷静に受け止めてる自分がいる。
周りに立ち込める君の香りと血の臭いが混ざりあってなんとも言えない不快臭。
ぐにゃっとした臓物の感触。
吐き気さえも腹の奥へ押し戻す。
その傍ら、パニクった俺の頭の錯覚か、
陽炎が嗤ってるような気がした。
嘘じゃないぞって…。
その数秒後---
喉が潰れんじゃないかって勢いで大声を上げる---
俺がいた。